金沢のファッションストリートとして知られる竪町商店街のジーンズショップ「MAGIC(マジック)」(金沢市竪町、TEL 076-262-1331)が、ジーンズやTシャツなどに金箔(きんぱく)をプリントする独自の「印箔プリント」技術を開発し、注目を集めている。
印箔プリントはデニムや綿、絹、ポリエステルなどさまざまな布に対応でき、洗濯も可能。特殊な表面加工は施さないため、箔本来の質感が保たれる。金沢は純金箔の国内シェアの98%を占めているという背景もあり、印箔プリントは2008年度「金沢ブランド」「石川ブランド」に認定。地域資源を生かした新たなビジネスを支援する県のファンド事業にも採択されている。今年2月と9月に東京ビッグサイトで開催されたギフトショーに金箔ジーンズやTシャツ、小物類を出展し、好評を博したという。
マジックは木戸口智一(としかず)さんがジーンズの販売からスタートした小売店だが、ジーンズが好きで「ボタンに至るまで捨てる部分は一つもない」との思いから、ジーンズのリペアとリメークを手がけるようになった。その後、オーダーメードのプリントTシャツの製作も請け負うようになり、印箔プリントのアイデアを得た。
印箔プリントは市場に出ないくず箔を使用できるため、資源の有効活用につながる。木戸口さんは、プリント技術とリメーク・リペア技術を組み合わせて1本のジーンズを長く愛用することも提案していきたいという。
「資本も歴史もないマジックがここまで注目してもらえるようになったのは、地域の皆さんの応援のおかげ」と木戸口さん。地域に恩返ししたいと、印箔プリントの作業工程を近隣の福祉作業所で働く人々に教え、商品の袋詰めとともに仕事を発注している。
木戸口さんの妻・景子さんがパターンから起こして制作した作品が、今年10月に開催された「いしかわファッションコンクール」でグランプリに輝き、金箔だけに頼らないデザイン力があることも示した。
「社会や市場が目まぐるしく変化する中で、印箔プリントは来年には忘れられてしまうかもしれない。でも、だからこそ今やらなければならないことがある」と木戸口さんは熱い思いを胸に秘めて意気込む。