輪島塗の職人によるトークショーが6月27日、石川県立美術館(金沢市出羽町)で行われた。
石川県美の特別展「輪島塗 -漆文化を後世に-」と職人のトークショー
同日に始まった特別展「輪島塗 -漆文化を後世に-」の関連イベント。同館の青柳正規館長が、輪島塗の産地復興に向けた石川県の「輪島塗の若手人材の養成施設の整備等に関する基本構想」策定委員会で委員長を務めたことが縁となって企画した。当日は会場のホールに100人ほどが集まった。
登壇した輪島塗技術保存会・会長で漆芸家の浦出勝彦さんは、輪島塗には八職と呼ばれる仕事の分類があり、さらに細分化された専門職の連携で成り立っていると説明。震災を「被害は大きかったが、仕事場さえあれば作業をすぐに始められる職人ばかりだった。体が技を覚えている。頼もしく思った」と振り返る。一方で「これからは現代に合うものを考えデザインや企画をする発想が必要。若い人に期待するが、新たに来てくれる人の住む所がないのは大きな問題」と話す。「漆は一緒に住んで面倒を見てあげる必要があるので、職人の工房と住居が同じであるべき。仮設の工房や住居だと難しい」とも。
木地師の西端良雄さんは、輪島塗の上流工程にある木地がないと困る職人も多いだろうと、地震後しばらくは避難所から工房へ通って仕事をしていたという。「木地師は裏方仕事だけだと思われがちだが、決してそうではない。生活様式が変わったのに輪島塗が同じでは駄目。若い人たちは与えられた形を作るだけではなく、新しいデザインなどを自ら作っていくことを期待する。例えば漆は殺菌効果があるので病院の手すりに使うなど、建築に近いものあってもよいのでは」と話す。
漆芸家の中室惣一郎さんは、輪島では多くの職人仕事が徒弟制度なため、最初の4年ほどは下働きになることが多いことに触れ、「大卒初任給が20万円を超える時代に下働きは厳しいが、作家になるなど明るい未来がある。これを私たちはちゃんと示していかないといけない。最近は万年筆の軸などを購入する海外の顧客が急激に増え、こんなに緻密な手仕事が残っている国は他にないという評価をもらうなど、明るい兆しを感じている」と話す。
会場の参加者で、通訳ガイドをしているという女性からは「インバウンド(外国人観光客)は工芸品など価値を認めれば高額であっても買ってくれる。輪島にも工房見学など価値を体感できる仕組みが必要ではないか」という意見が出された。
浦出さんは「輪島塗は職人の仕事もちゃんと伝えていきたい。今回の展覧会では展示や解説に協力した。制作方法や工程などを詳しく説明しているので見てほしい」と呼びかける。
特別展の開催時間は9時30分~18時。観覧料は一般=1000円、大学生=800円、高校生以下無料。8月2日まで。