
建築フォーラム「美の新拠点・金沢美術工芸大学」が4月19日、金沢美術工芸大学(金沢市小立野2)で行われた。
「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」(寺町5)が主催する企画展「知と美の新拠点・小立野」の関連イベントで、2023年に完成した同大学キャンパスを設計したSALHAUS(サルハウス)、カワグチテイ建築計画、仲建築設計スタジオの3社から成る7人の建築家チームが登壇してプロジェクトを振り返った。会場の講義室には学生など約80人が集まった。
金沢美術工芸大学教授で、移転プロジェクトを担当した当時の学長だった山崎剛さんは、今まで金沢美大には正門もフェンスもなかったことに触れ、開かれた空間こそが開かれた関係性をつくるとして「開かれた美の探究と創造のコミュニティー」を新キャンパスのコンセプトにしたと説明。領域を横断して探究することも美大では伝統的に重視してきたことから、「専門外の学生も学べる『共通工房』を設置して知識や技術を『開く』ことによって、学内のセクショナリズムを取り除こうと考えた」と話す。
SALHAUS(東京都千代田区)の建築士・日野雅司さんは、チーム全員が山崎さんの考えに共感し、一般にも開かれた展示室「アートコモンズ」のある半屋外の「アートプロムナード」を採り入れるなど、「コンセプトの実現を目指してプロポーザルを制作した」と振り返る。一方で学生に閉じた空間の中では学生同士の制作過程が見えるようにした「創作の庭」を配置したり、制作に集中できるように閉じた空間を用意したりと、「『開く』『閉じる』のバランスを重視した」とも。
山崎さんは「運用方法の検討など、今でもキャンパスを作っている感覚。まるで生き物のような感じで建物を捉えている」と話す。