金沢のミニシアター「シネモンド」が10周年-黒沢清監督も来館

満席のシネモンドで作品について語る黒沢監督(左)と同館代表の土肥さん(右)

満席のシネモンドで作品について語る黒沢監督(左)と同館代表の土肥さん(右)

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 石川県唯一のミニシアター「シネモンド」(金沢市香林坊2 KOHRINBO109 4階、TEL 076-220-5007)が12月19日、開館10周年を迎える。

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 同館では、同6日より10周年記念イベントとして黒沢清監督作品「トウキョウソナタ」の上映が始まり、初日には黒沢監督が同館を訪れ、トークイベントを通して観客と交流を図った。同作品は香川照之さん、小泉今日子さん演じる夫婦と大学生の長男、小学生の次男の家庭を描いた物語で、今年度カンヌ映画祭の「ある視点」部門賞を受賞。現代社会に生き、年齢も趣味も目的も考え方も異なる4人がそれぞれに秘密や問題を抱え、ギクシャクしながらも家族として暮らす姿を描く。

 黒沢監督は観客からの質問に対し、ホラー作品が続いた後に家族を描いた作品を撮ったきっかけや、ラストシーンで奏でられるピアノ曲にドビュッシーの「月光」を選んだ理由、役所広司さんが泥棒役として出演するに至った経緯や撮影現場の雰囲気などについて語った。作品には家長のリストラや長男の米軍入隊など現代の世相が織り込まれ、「今生きている人間一人ひとりのドラマを先に考え、彼らが家族だったらどうするだろうと思って作品を作った。家族に限らず、相手のことを分かりたい、自分のことを分かってもらいたい、共通の何かを見出したい、信頼したい、信頼されたいといった人間の基本的なものをささやかに守っていければ世の中は大丈夫なのでは」とコメントした。

 同館は1998年12月19日に開館。代表の土肥悦子さんは、パリ第三大学映画学科に留学後、1989年、映画の製作・配給・興行を手がけるユーロスペース(東京都渋谷区)に入社。イラン映画のアッバス・キアロスタミ監督の作品などを日本に紹介した後、1995年に結婚を機に金沢へ転居した。初の地方都市暮らしで「見たい映画を上映してくれる映画館がない」ことを実感し、1996年にはイラン映画祭を東京のほか金沢を含む地方都市でも企画開催。金沢市内では市街地の映画館を借りて自主上映会を開くなどの活動を経て、当時映画館が軒を連ねていた香林坊エリアに同館をオープンした。同館のオープニング上映を飾ったのはインド映画「ムトゥ 踊るマハラジャ」で、以後、アート系の作品を中心に上映を続けている。

 土肥さんは2001年より東京に在住し、映画作品の試写に足を運び、映画人との交流を広げている。「文化はその街の大きな魅力。私にとって映画なしに生き生きした生活はあり得ず、『こんな素晴らしい映画を大勢の人に見てほしい』という思いでやってきた。金沢で10年続けてこられたのは、来館してくれた皆さん、スポンサーとして支えてくれたお客様と現場で頑張ってくれたスタッフのおかげ。皆さんに支えてもらい、ありがとうと言いたい」(土肥さん)。

 同館では10周年記念として来年1月にも藤本幸久監督と池田香代子さんのトークイベントを予定しているほか、12月中に入会すると招待券1枚がついてくる入会キャンペーンや、来年12月末まで有効な会員用ポイントカードを導入するなどのサービスを実施している。

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