金沢市の城北診療所(金沢市京町、TEL076-252-6111)に設立されているアレルギーの子を持つ親の会「ももたろう倶楽部」は11月22日、会の設立20周年を記念した「ホテルランチパーティー」をANAクラウンプラザホテルで開催した。同会の104組の親子が参加し、調理長が腕を振るったアレルギー対応のコース料理を満喫した。
会員は日常生活での外食を制限されている。今回、同会が設立記念としてホテルパーティーの開催を計画し市内のいくつかのホテルに連絡したが、アレルギー対応料理は調理過程で厨房内の完全なアレルギー因子を除去することなどが困難で難航していた。そうした中、ANAクラウンプラザホテルが「何よりも安全が第一、ホテルの厨房でも最善を尽くしたい」と快諾し、石川県内で初の「食物アレルギー対応パーティー」が実現した。
同ホテル洋食調理長の小石幸一郎さんは「除去食として考えるよりも、もともと因子となる食材を使っていないメニューを基本として、できる限りおいしい料理を提供したい」という思いで、同倶楽部と打ち合わせを重ね特別メニューを開発した。
アレルギーには多くの因子があるといわれ、タマゴ・牛乳・小麦・ピーナッツなど広く知られているものから、バナナやジャガイモなど身近で意外なものにまで及ぶ。同ホテルでは、調理中に厨房のオーブン中に残る浮遊タンパク質を吸収しない工夫や、作業ごとに菜ばしを変えるなど細心の注意を払った。
メニューは、大人向け、子ども向けの特別コース料理各2種と大人向けの通常コースを用意した。同料理長考案の「カワハギのフライ」はパン粉の代わりにサツマイモを粉にしたもの。そのほか、キビをパスタにした「きび麺と野菜のパスタ」、タマゴの代わりにサツマイモをゆでて裏ごしタピオカ粉とオリーブオイルをあわせた「オムライス」、オクラの粘りを利用した「ハンバーグ」、菜種油を使ったリンゴケーキなど、親子ともに満足できる内容となった。
参加者からは「こんなにおいしい料理を安心して食べられる機会は少なく、家族で楽しめた」「一流のホテルで家族がそれぞれに合う料理を楽しめたのがうれしい」「見た目にも美しい料理で『食』を心から楽しめた」などの声が聞かれた。当日は子どもたちから医師への花束贈呈、お母さんたちによる「世界にひとつだけの花」の手話の替え歌、バルーンアートなども行われ、食事の場をきっかけとした交流でも盛り上がった。
「ももたろう倶楽部」は1988年に食物アレルギーを持つ保護者により結成された。城北診療の松本一郎小児科部長を顧問に、2カ月に1回の気軽な情報交換と交流の場とするおしゃべり会「ももサロン」を設けるほか、年間行事で1泊旅行や調理実習、持ち寄りクリスマスパーティーなどを行い、年4回の機関誌も発行する。同診療所でのアレルギー患者は現在440人、倶楽部の会員は160家族となっている。
同倶楽部会長の伊藤嘉代子さんは、「アレルギーのお子さんを持つことで、お母さん自身鬱(うつ)になってしまうこともある。同じ悩みを抱えた家族同士が情報交換し積極的にアレルギーと向き合うことで、子どもの健康もよくなりお母さんも内面からきれいになっていく。この活動を通じて前向きな生活を提案したい」と話す。