金沢三茶屋街のひとつ主計町(かずえまち)の町屋「廬宅(いえ)」で10月25日から、建築家の視点でまちづくりを考え市民に紹介するためのイベント「主計町フォーラム」が開催されている。
石川県内を拠点に5年前から活動を進めてきた建築家20人で構成するグループ「建築家Catalogue」が、建築家らと市民の対話・交流の場を広げ、建築に対する哲学を紹介する場づくりとして座談会や立体造型物の展示を行っている活動の一環。
座談会は、期間中の毎土曜全5回開催し、「住宅設備がもたらすもの」「東京経由金沢」「主計町展望」「体感するしつらえ」「プランが語る家族のくらし」をテーマに、地域性を生かしたまちづくりや住環境を考える。
11月1日に開催されたフォーラム「東京経由金沢」では、東京の著名建築家の下で修行し、現在は金沢を拠点に活動する建築家8人が「地域性に力点を置いた建築のかたち」について意見を交わした。同8日のフォーラム「主計町展望」では、メンバーの建築家・平口泰夫さんをコーディネーターに、主計町の割烹「太郎」の女将・松村多美子さんと「一葉」の女将・柄崎たか子さんをパネリストに迎え、茶屋街の風情や町並みの保全などを語り合い地元市民ら約30人が耳を傾けた。
「主計町展望」では、藩政時代の藩士・富田主計の屋敷があったことに由来する「主計町」という町名が1970年にいったん消滅。その後1999年に復活した際の経緯や、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定された歴史などが語り合われ、松村さんは「加賀百万石文化の集大成ともいえる茶屋文化の情緒を保っていきたい」とコメント。柄崎さんは今年7月の浅野川の氾濫について1953年の大洪水と比較し、当時を振り返りながら「変わらぬ町のつながりを大切にしながら、この趣ある風情を守っていきたい」と語った。最後に平口さんが「この場をきっかけとして市民一丸となって、金沢の文化であるお茶屋を応援していきたい」と締めくくった。
企画展示では「創作のポジション」と題して、メンバーが自ら考える建築の根底にある精神や発想の基を表現した粘土などの立体造型を輪島塗の膳(ぜん)に並べて展示している。
企画展示は期間中の土曜・日曜・祝日開催。開催時間は10時~18時。座談会の今後の予定は、11月15日=「体感するしつらえ」、22日=「プランが語る家族のくらし」。いずれも15時~17時。入場無料。11月24日まで。