加賀友禅作家で構成する「平成友禅商店」のメンバーが、東日本大震災直後の2011年4月から金沢白鳥路ホテルを訪れた一般の人々と共に制作を進めてきた「千人筆のれん」が完成し3月10日、「めいてつエムザ」(金沢市武蔵町)で贈呈式が行われた。
被災地に寄贈するのれんは5点。制作には1点につき約110人、延べ約550人が参加した。縦180×幅72センチメートルののれんには、松島の風景や羽ばたくトキ・東北の里山風景・桜など同商店のメンバーが施した下絵が描かれ、これらに参加者がおのおのの思いを込め彩色した。
出来栄えについて、同プロジェクトの事務局と世話人を務める友禅作家の太田正伸さんは「初めは参加者に自由に彩色してもらったせいか、奇抜な色合いも多かった。2年という制作期間中、私たち作家がアドバイスすることで全体的にうまくまとまったと思う」と話す。3月6日~12日の展示期間中は、会場で加賀友禅グッズのチャリテーオークションや被災地への募金活動も行われた。
贈呈式には、山野之義金沢市長も出席。「金沢でも被災地に職員を派遣しており、今後も民間と協力して支援活動を続けたい」とあいさつ。プロジェクトの実行委員長を務める加賀友禅作家の石田巳代冶さんは「花嫁が嫁ぐ際に用意するという『花嫁のれん』は石川の風習。その文化を伝えるとともに、職人や参加してくれた人々が願う復興への思いが被災地に伝われば」と話した。
のれんは4月中にボランティア協会により「陸前高田市社会福祉協議会」(岩手県陸前高田市)、「特別養護老人ホーム慈恵園」(宮城県南三陸町)、「子どもも大人もみんなで遊び隊」(同山元町)、「みなし仮設住宅」に住む人々を支援する「ほっかほっかグループ」(同仙台市)、「小網倉浜 We are the 大漁プロジェクト」(同石巻市)に贈られる。