加賀友禅作家や染色、のり置き職人らで作るグループ「平成友禅商店」が現在、東日本大震災の被災者の心を癒やそうと、友禅のれん4枚を製作している。同グループが毎月、金沢白鳥路ホテル(金沢市丸の内)で開いている新作小物展示会の来場者にも絵筆を握ってもらい、「千人針」ならぬ「千人筆」で仕上げて被災地に届ける計画だという。
のれんの大きさは縦180センチ、幅80センチ。第1弾は金沢市内に工房を構える友禅作家、高松広枝さんのデザインで、1年を通して飾れるように、本来は季節が違う桜と梅、ツバキ、モミジ、松を組み合わせて描いた。花の一輪一輪、葉の一枚一枚に色をつけるのは展示会の来場者。大切な家族や家を失い、不自由な避難所生活を強いられている被災者に少しでも安らぎを与えたいと願いながら、正絹の布地の上にピンクや白の花を咲かせている。
これまでに市民や観光客ら3歳~80歳代の男女が協力した。中には、厚生労働省が乳児に水道水を飲ませないよう指導している首都圏から旅行中の親子連れもおり、こちらは気分転換で楽しんでいた。
参加した金沢市在住の寒玉書道会総務春田愛子さん(86)は「毎日、皆と微力でも(被災者のために)何かできないかと話をしている。花びら一つでも、北陸のおばあちゃんから届いたと思っていただければうれしい」と、被災地に思いをはせた。
同グループの展示会は毎月1週間~10日程度、同ホテルで開かれている。次回は5月21日~29日。のれん4枚のうち2枚は7月ごろまでに完成させ、お披露目をしたうえで、希望があった被災地に送る。残る2枚も12月ごろまでに仕上げる予定だという。
同グループの北澤寛司さんは「まだ参加者の数は少ないが、喜んで協力してもらっている。こんなことしかできないが、少しでも被災者を励ますことができれば」と話す。
参加無料。会場には募金箱も置いている。