金沢交通圏の法人タクシー16社は11月26日、北陸信越運輸局に初乗り運賃の値上げを申請した。申請が認可されれば、上限運賃は670円(小型初乗り)から730円~790円になる見通し。先週22日には、個人タクシー149者の値下げ申請が認可され、下限運賃の560円(同)で走るタクシーが大幅増となる中、法人タクシーにとっては経営改善への期待と顧客流出の懸念のはざまでの厳しい決断になったようだ。
石川運輸支局によると、値上げ申請したのは大和タクシー、石川交通、冨士タクシー、石川近鉄タクシーなど大手をはじめとする16社。燃料費の高騰や旅客減に伴い悪化している乗務員の労働環境の改善を図るためとしている。
法人タクシーは当初から値上げ申請をしていたものの、今年8月、大和タクシーグループが下限運賃の法人タクシーとの競争激化を理由に申請を撤回、9月に入ると一転、値下げ申請に踏み切り、法人タクシー30社もこれに追随した。しかし、同グループは値下げが認可になる直前の11月7日、予想を上回る燃料費の高騰を理由に申請を撤回し、再び30社すべてが申請を取り下げるという事態になった。
それから間を置かない今回の値上げ申請に対して、「あまりにも利用者不在で、猫の目のように変わる姿勢は見苦しすぎる」との厳しい声が、大手に振り回される中小の法人タクシーや利用客から上がっている。一方、値下げした個人タクシー関係者は「運賃差が一段と拡大すれば、安いタクシーを利用するお客さんが増えるのは必然。燃料費の高騰で薄くなった利幅を量でカバーしていきたい」と話す。
上限運賃を超える改定を審査するには、地域内の車両の70%を超える申請が必要。今回の16社の申請分と、以前の申請を取り下げていなかった1社分を加えた申請率は66.3%(959台)で、石川運輸支局では来年1月末までに70%を超える申請があった場合、審査を行う方針。ただ、大手が軒並み値上げ申請したことで、中小の事業者も追随する可能性が高まっている。