ズワイガニ漁が11月6日午前0時、石川県沖で解禁され、金沢市民の台所「近江町市場」(金沢市青草町)の各鮮魚店には7日9時の開店から、まだ足を動かしている生きたカニやゆでガニが並べられた。今年は、金沢沖で獲れたズワイガニの雌(めす)、コウバコガニが「かないわ香箱」のブランド名で販売されたほか、加賀市の橋立漁港に揚がった雄にも独自のタグがつけられ、旬の味を求める買い物客が産地表示に目を凝らした。
「かないわ香箱」は、県漁業協同組合の金沢港支所と金沢支所が「大きくて甘みが強く、身がしっかり詰まっているコウバコガニとして、昔から近江町市場で知られていた『金石のコウバコ』の名前をもう一度、復活させたい」と命名。両支所に所属する底引き網船18隻が金沢港に水揚げするコウバコガニの名称として今シーズンから使い始めた。
一方、同組合加賀支所は、橋立漁港に揚げられた雄に、金の文字で「橋立港」と記した縦4・5センチ、幅2センチの黒色のタグをつけた。同支所では、「海底が泥の場所に住んでいて、身が締まっているとよく言われるので、差別化を図りたい」と話す。
県内で水揚げされるカニの7割が集まる金沢市の同組合かなざわ総合市場によると、初日の漁は天候に恵まれたこともあって、水揚げ量は雄・雌とも前年比約25%多く、特にコウバコガニは近年にない豊漁だった。
近江町市場では7日、日曜定休の店も含め、鮮魚店28軒がすべて営業し、9時の開店から盛大にカニを売り出した。このうち、大口水産は、コウバコガニは大型の200グラムを昨年のほぼ半額の1杯800~1,000円、ズワイガニの雄「加能ガニ」は大きい1.2キロを昨年より約3割安い1杯1万円で販売した。「かないわ香箱」、橋立産と県内他産地のものの価格差はないという。ヤマカ水産も、「かないわ香箱」のポスターを掲げて客を呼び込んだ。
各店には、「日本海の冬の味覚を堪能したい」と解禁の日を首を長くして待っていた市民らが訪れ、家族の人数分のカニを買い求めた。コウバコガニを手に取る客が多く、中には「息子は毎年初日に3杯食べるのを楽しみにしている」と話し、3人家族ながら「かないわ香箱」9杯を購入する主婦も。同市内の会社員男性(42)も「コウバコガニは初日の方が安いので、毎年買いに来る。今年はいつもの年と比べて、大きくて安かった」と満足そうな表情を見せた。
同市場は13日・14日に「カニまつり」を開催し、ズワイガニ汁1杯を200円で販売する。
コウバコガニ漁は1月10日まで、雄のズワイガニ漁は3月20日まで。