金沢21世紀美術館(金沢市広坂、TEL 076-220-2800)で現在、展覧会「ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス」が開催されている。
「ソーセージ・シリーズ」(1979)、《絨毯屋にて》(「ソーセージ・シリーズ」より、1979)カラー写真、24×36センチ
共にスイス・チューリッヒ生まれのアーティスト、ペーター・フィッシュリさんとダヴィッド・ヴァイスさんが、写真・立体・映像・インスタレーション・ドローイング・本など、さまざまなメディアを柔軟に操り、身近な光景や事物に見え隠れする意味のズレや解釈の多様さを提示する同展。皮肉とユーモアを織り交ぜながら人間社会の本質を浮き彫りにした彼らの作品は、独自の美学に貫かれた表現の妙と、秩序と混沌(こんとん)が織りなす主観的な百科全書的世界が特徴。
1970年後半、当時チューリッヒのアートシーンの中心的な場であったバー「コンティキ」などを通じて親交を深めた2人は、「日常」をテーマに共同制作を続けている。ソーセージやハムで日常を再現し、写真に撮った風景画「ソーセージ・シリーズ」(1979)や、自らがネズミとクマに扮(ふん)し社会システムの矛盾を暴き、秩序を構築しようとした映像作品《ゆずれない事》(1980-1981)などを発表。2003年のベネツィア・ビエンナーレでは《無題(質問)》が金獅子賞を受賞するなど国際的にも高く評価され、世代を超えて多くのアーティストに多大な影響を与えている。
彼らの作品がまとまった形で展示されるのは、国内はもとよりアジア全域を含めても初。同展では約70点を展示する。1981年の初個展で一躍彼らの名を世界へ馳せることになった作品《不意に目の前が開けて》の2006年新バージョンのほか、《質問》は同展に合わせたテキストを日本語に置き換えた新しいインスタレーションとして展開する。また、初期のころから登場する「ネズミ」と「クマ」をモチーフにした作品群のうち、人形2体に呼吸装置2台を設置しリアルな睡眠姿を表現した《無題(ネズミとクマ、睡眠中)》が来場者の目を引いている。
開場時間は10時~18時(金曜・土曜は20時まで)。月曜閉場。入場料は、一般=1,000円、大学生=800円、小・中・高校生=400円、65歳以上=800円。12月25日まで。学芸員によるギャラリー・トークも予定する(11月27日・12月23日)。