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旬の加賀野菜タケノコが表年で豊作 産地に移住した若者が昔ながらの味守る

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 葉桜が芽吹き始めるころ、金沢で旬を迎えるのが、加賀野菜の一つ、春の味覚のタケノコだ。金沢市中央卸売市場(西念)で4月11日に行われた初競りでは、最高等級「秀」8箱を含む213箱が競り落とされた。今年は、収穫量の多い「表年」にあたり、シーズン出荷量は、昨年の3.5倍にあたる約420トンを見込んでいる。

 金沢市は1945年以前から栽培され、現在も金沢で栽培されている野菜を「加賀野菜」として認定し、ブランド化している。タケノコは、石川県内で生産される9割が金沢産であり、加賀野菜15品目の一つに数えられる。全国でも最も北に位置する産地で、南の暖かい地域から旬を迎えるため、金沢では5月20日ごろの遅い時期まで楽しめる。金沢産は、えぐみが少なく、みずみずしく、柔らかいのが特徴で、県内はもとより関東や関西にも出荷されており、今年は4月下旬から5月上旬に出荷の最盛期を迎える。

 JA金沢市の担当者によると、過去には多い時で1,000トンの出荷があったという。高齢化により、生産者は年々減っているものの、内川や富樫地区を中心に約140人の生産者が栽培している。

 内川地区地域おこし協力隊員の浜口ゆきのさん(写真左)と元隊員の高野智司さん(同右)

 とりわけ、タケノコの名産地として知られる内川地区ではこの時期、直売所に多くの地元客などが訪れる。「たけのこ直売所 高野」(別所町)を祖父母の代から家族で営む高野勝志さんは4月18日、早朝から旬の味を求める多くの客の対応に追われていた。店頭には、みずみずしい朝採れのタケノコがズラリと並ぶ。高野さんは「今年は表年で豊作。売り上げも順調」と笑顔を見せる。地元の常連客が県外に配送を頼むことも多いという。

 一方、約20年前には、内川地区に10軒以上あったタケノコ料理の専門店は、高齢化にコロナ禍が追い打ちをかけ、2021年春ごろまでに全て閉店した。現在では、そば店「蕎麦(そば) 宮川」(別所町)が期間限定メニューとして、タケノコご飯と煮物を提供するのみとなった。

 産地ならではの味を守り、継承していこうと、内川地区の地域おこし協力隊員の浜口ゆきのさんと元隊員の高野智司さんが4月17日、タケノコをふんだんに使った「内川たけのこ弁当」の販売を始めた。

 内川たけのこ弁当

 弁当は、高野さんが2021年から地域おこし協力隊として製造販売していた「たけのこご飯」に、今年から浜口さんと共に、タケノコの天ぷらと煮物を加えた。地区で最後のタケノコ料理専門店を営んでいた小坂栄司さんに、昔ながらの調理法や味付けを教わったという。産地ならではの素材の良さが伝わるよう、厚切りにし、化学調味料などを使わないシンプルな味付けで提供している。価格は1食800円で、1日50食限定。電話とインスタグラムで予約を受け付け、平日は内川公民館(三小牛町)、土曜・日曜・祝日は新保町の製造所で受け取れるほか、予約以外の分はJAの直売所「ほがらか村野田店」(野田町)で販売している。初日は店頭に並んだ途端、即完売した。

 浜口さんは千葉県出身。金沢美術工芸大学で金工を学び、卒業後は、東京都内でジュエリーデザイナーとして働いていたが、北陸の自然に囲まれて暮らしたいと移住を決め、今年から地域おこし協力隊員として活動している。持ち前のデザイン力を生かし、弁当のパッケージデザインも手がけ、インスタグラムで情報発信も行っている。浜口さんは「学生時代は金沢市内の割烹で4年間アルバイトをしていて、石川の食材は大好きだった。弁当には、タケノコの素材のおいしさや魅力を存分に生かし、ぜいたくに使っている。小坂さんの指導を受け、タケノコ料理の継承や販売はもちろん、竹を使ったものづくりにも取り組んでいきたい」と意気込む。

 高野さんは埼玉県出身で、2020年から地域おこし協力隊員として活動し、現在は林業の傍ら、「内川たけのこ弁当」も製造している。高野さんは「この地域のタケノコは鮮度がよく、水だけであくが取れる。香りもいい」と話す。地元客からは、飲食店を構えてほしいという声も多いが、「高齢化や社会情勢の変化で、内川にタケノコ料理専門店がなくなってしまったのは寂しいこと。ただ、今の時代、期間営業だけでは継続が難しい。弁当の形で、昔ながらの味をたくさんの人に味わってもらいたい」と話す。弁当は5月上旬まで、販売する予定。

 ゴールデンウイークには、恒例の「内川たけのこまつり」の開催を予定しており、タケノコ、山菜、総菜などを販売するほか、タケノコの重さ当てクイズやタケノコ堀り体験などのイベントも行う。内川たけのこ祭り実行委員会の担当者は「今年は表年なので、昨年は不作で出せなかった天ぷらや煮物も提供できる。楽しみにしてほしい」と話す。

 「内川たけのこまつり」の開催は4月28日の10時~13時、内川公民館で開催。当日は平和町から会場直通の無料送迎バスも運行する。問い合わせは実行委員会(TEL 076-247-2263)まで。

 

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