初売りの1月5日、金沢の近江町市場(金沢市上近江町50)で色鮮やかな「紅鯛(べんだい)」が飾られた。石川県立歴史博物館(金沢市出羽町3、TEL076-262-1836)と同市場商店街振興組合が、古き戦前の美しい正月風景を再現するため企画した。「べんだい」のレプリカ約250本が今月15日まで各店の軒先に飾られ、買い物客の目を楽しませている。
「べんだい」とはせんべいの鯛(タイ)や小判などを枝につり下げた正月の縁起物で、戦前には市場に「べんだい」を売る屋台が並び、雪がうっすら積もった街中を色鮮やかな「べんだい」を肩にのせて帰路につく人々の姿が多く見られたという。泉鏡花が「雪の中をこの紅鯛綺麗なり」と、金沢の正月風景を懐かしんだことでも知られる。
同5日・6日、紙粘土で「べんだい」のレプリカを作るワークショップ「べんだいを作ろう!」が開かれ、両日の定員が100人のところ初日から60人を超える参加者が訪れ、2日目の午前中に定員に達する人気に。材料費200円でヤナギの枝を購入し、紙粘土で鯛・まねきネコ・宝船・まゆ玉などを制作。小判や短冊とともに自由に飾り付け、完成品を持ち帰ることができる。伝統の風物詩を子どもに伝える親子連れなど、多くの買い物客が創作活動を楽しんだ。同組合事務長の吉本紘三さんは「金沢の風物詩として興味を持つ人が多く、予想以上に盛況だった。来年以降も続けることばできれば」と話す。
県立歴史博物館では、同プロジェクトと同時に「近江町の大行灯絵展」を開催。近江町での秋祭りの名場面を表した8畳大の巨大なあんどん絵が展示し、上近江町に伝わる昭和30年代以前のあんどん絵や、今年度新たに発見された下近江町のものなど、合わせて約20枚を一挙に公開している。今月25日まで。