能登半島地震からの復興をテーマにしたフォーラムが6月1日、金沢市文化ホール(金沢市高岡町)で行われた。主催は認定NPO法人趣都金澤。
同フォーラムは「能登をつないでいく」と題して、金沢が能登各地域のつながりを深めていくハブの役割を担いながら復興を支援しようと開催。能登各地で活動する4人が登壇し、それぞれの復興に向けたビジョンを参加者と共有した。
杉野智行さんは、能登半島の震災後に石川県庁を退職して輪島市門前町黒島地区に移住。ゲストハウスを経営する傍ら、同地区復興のボランティア活動を推進している。これからの能登には人と人のつながりが最も重要とした上で、地域のコミュニティーをつくるためには、「まずは自ら実行すること、次に広く共感を集めるために活動の看板を掲げること、活動支援してくれた人に感謝することが大切」と話す。
多田健太郎さんは和倉温泉の老舗旅館「多田屋」(七尾市)の社長。同地区の旅館のほとんどが営業を再開できていない中で、「和倉温泉創造的復興ビジョン策定会」の委員長を務め、発足から3週間でビジョンを策定して知事に説明した。同ビジョンには、今までは旅館の中に閉じたビジネスが多かったが、今後は客が地域内の店や観光資源を「めぐる」ようにするなどの方針を盛り込んだ。「ビジョンは地元の夢や強い思いがあったからこそ作れた。金沢などとの交流が増えている今こそ和倉温泉の魅力を再発見してもらい復興に取り込みたい」と話す。
「輪島キリモト」(輪島市)の社長・桐本泰一さんは、建築家の坂茂さんの協力で敷地内に建てた紙管を使った建物を輪島塗の仮設工房に使っている。簡単に建てられた経験から、補助金の申請方法などの情報と併せて関係者とノウハウを共有するという。公費で仮設工房30棟を建設する計画に合わせて、施設のビジュアル・アイデンティティーも構想。「輪島塗は廃業や職人の転出などで縮小するが、やる気のある人が残るだろう。復興によって密度の濃い町にしていきたい」と話す。
「櫛比の庄禅の里交流館」(同門前町)を運営する宮下杏里さんは復興ボランティアの活動や地域商店街の再生に取り組んでいる。2007(平成19)年の地震からようやく復興したばかりなのにという悲観的な声が多いとし、「住む人たちがまず楽しいと思えるまちづくりをしないと観光客も来ないだろう。総持寺通り商店街で休止している『門前マルシェ』を復活させる計画や仮設商店街が完成する機会に笑顔を取り戻したい」と話す。
パネルディスカッションでは、総持寺(同)に修行に来た僧侶が使っていた器を地元に持って帰ることで輪島塗が全国に広まった話などから「土地のつながり、歴史のつながり、人のつながりに復興のヒントがあるのでは」という意見が出た。