ロンドン五輪の柔道女子57キロ級で松本薫選手(24)=フォーリーフジャパン、金沢市出身=が今大会日本勢初の金メダルを獲得した7月31日未明(日本時間)、地元・金沢では高校3年まで指導した恩師夫婦がまな弟子の快挙を喜んだ。
恩師は、岩井柔道塾(石引2)の塾主・岩井克良さん(66)。松本選手は5歳の時、きょうだいが稽古に通っていた同塾に入り、東京の高校で学んだ1年半を除き、高校3年まで岩井さんの指導を受けた。
この日、岩井さんは妻の博子さん(62)と共に、道場に用意されたテレビで1回戦から決勝までを観戦した。岩井さんにとって、松本選手は「無口で負けず嫌い。小さい時からひたむきで、まじめに稽古に取り組んできた」という自慢の教え子。五輪の大舞台にも動じることなく、終始、果敢に攻撃を仕掛ける姿に「薫らしい柔道」と目を細めた。
決勝が始まると、岩井さんは腕組みして画面に見入り、博子さんは祈るような表情に。いったんは認められた「有効」のポイントが取り消される波乱もあり、気を抜けない展開となったが、対戦相手であるルーマニアのカプリイオリウ選手の反則で勝利が決まると、2人は表情を緩め、握手して喜びを分かち合った。
岩井さんは「金メダリストが出るなんて思いもしなかったこと。(薫の)人の何倍もの努力が実った。10年前に脳梗塞で倒れ、リハビリを続ける私にとっても励みになる」と笑顔を見せ、「試合で勝つたびにきれいになる。金メダルでどれくらいきれいになったか、見てみたい」と軽口も飛び出した。博子さんも「『がんばったね』と抱きしめたい」とほっとした表情で語った。
2人は近く松本選手に祝福の電話を掛けるという。道場には、松本選手と共に稽古をしたことがあるOBや、元塾生の父親らも祝いに駆け付けた。