足で絵を描く水彩画家・山口かほるさん(61)の個展が現在、金沢のギャラリー「ガレリア ポンテ」(野町1、TEL076-244-6229)で開催され、明るい色調で花や猫を描いた作品が来場者を楽しませている。
山口さんは東京都国分寺市在住。生後3カ月の時、高熱に苦しみ、脳性まひの障がいを抱えるようになった。両手が動かなくなり、足も次第に自由が利かなくなって車いすでの生活に。そんな山口さんが絵を描く喜びを知ったのは、10歳の時だった。兄嫁に教わり、手で握る代わりに口で絵筆をくわえて紙に向かった。
1990年と1991年、1998年の3回、美術展で入賞を果たしたが、長年、力を込めて絵筆をくわえてきたため歯が悪くなり、間もなく医師から絵を止められた。
「どこかで描けないか」。必死に考え、思いついたのが「昔からよく動く右足」。親指と人さし指で絵筆を挟み、指をぎゅっと丸めて固定させる。「最初はすごい苦労した」が、1カ月後には口と同様に描けるまでになった。「転向」から10年以上たつ現在は15号の絵を5~6時間で仕上げるという。
「(絵を描くことは私の)生きる証し」という山口さんの絵は、ピンクや赤を多用した明るい色調が特徴だ。自宅で飼う猫の「真希」や花をモデルにした作品が多く、見る人を明るい気持ちにさせる。今回はここ3カ月内に完成させた近作約30点を並べた。「真希」に洋服を着せ、ちょうネクタイをつけさせた「えらそうな真希」、羽を広げた白鳥を描いた「きれいでしょ!!」、池の水面を悠々とした表情で進むカルガモをモデルにした「カルガモとコイ」など、ユーモアも盛り込んだほのぼのとした作品が来場者の目を引いている。
会場では連日、山口さんが絵を描いており、来場者は創作風景を間近に見ることができる。
開催時間は10時~18時(最終日は16時まで)。5月27日まで。