金沢の泉鏡花記念館(金沢市下新町2、TEL 076-222-1025)で現在、「幽霊と怪談の展覧会II」が開催されている。
怪談といえば、涼を誘う夏の風物詩という印象が一般的だが、同館では「泉鏡花が描く怪異の世界の真骨頂は冬」と考え、昨年に引き続き冬の怪談展を開催する。
前期展となる今回のテーマは「湯宿の怪」。能登・和倉温泉=「山海評判記」、伊豆・修善寺温泉=「斧琴菊(よきこときく)」、越中・小川温泉元湯=「湯女(ゆな)の魂」、木曽・奈良井宿=「眉かくしの霊」など、温泉宿を舞台に描かれた鏡花の怪異譚(たん)を紹介する。会場には執筆当時を思わせる各温泉地の古い写真や、1909(明治42)年に出版された希少本「怪談会」なども展示する。
明治後期、文壇の中心は自然主義文学を中心としてリアリズム志向を強くしていたが、一方で現実から遠い世界に引かれた文学者らの間では怪談が静かなブームを迎えていた。日本古来の伝承や怪談に素材を求めつつ、独自の怪奇幻想の世界を切り開いた泉鏡花は、怪談ブームの中心的存在だったという。
同館学芸員の穴倉玉日(たまき)さんによれば、「鏡花は水の気配の表現に優れた作家」だという。温泉地を舞台にした作品には、「水」が雪や湯気、雪解け水などに姿を変えて表れ、鏡花独特の怪しくも美しい世界が描かれているという。
開館時間は9時30分~17時。観覧料は300円。2月28日まで。3月3日からは金沢を舞台にした幻妖譚を紹介する後期展が始まる。