心を持った人形を描く最新作映画-是枝裕和監督、金沢で語る

韓国人女優ペ・ドゥナさんが心を持った人形を演じた映画「空気人形」(写真/瀧本幹也)の一場面

韓国人女優ペ・ドゥナさんが心を持った人形を演じた映画「空気人形」(写真/瀧本幹也)の一場面

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 心を持った人形を描いた是枝裕和監督の最新作「空気人形」の上映が11月14日、シネモンド(金沢市香林坊2 KOHRINBO109 4階、TEL 076-220-5007)で始まった。

「空気人形」についての思いを語る是枝監督

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 立ち見客を含む超満員の館内で初回が上映され、上映に続いて是枝監督が観客の質問に答えるトークイベントが行われた。

 同作品は、業田良家さんの20ページの漫画「ゴーダ哲学堂 空気人形」が原作で、是枝監督が自ら選んだ原作を基に作品を撮ったのは今回が初めて。空気を入れて膨らませて使うビニール製の人形がある朝突然動き出して心を持つようになり、持ち主ではない男性に恋心を抱き、今までに触れたことのなかった世界と出合っていくラブ・ファンタジー。韓国人女優ペ・ドゥナさんは、すらりとした長い手足と大きな瞳で人形ならではのしぐさを見せる一方、目新しい物や出来事と出合うときの表情や心を持ったが故の喜びや切なさを細やかに表現する。ARATAさんや板尾創路さん、高橋昌也さん、余貴美子さん、岩松了さん、星野真里さん、富司純子さんら実力派が、心のどこかに空虚さを抱えた街の人々を演じて脇を固める。

 アクシデントで空気が抜けていく空気人形に、その空気人形が恋心を抱く男性が息を吹き込む場面が官能的だったことから原作の映画化を思い立ったという同監督。大ファンでもあるペさんに出演依頼の手紙を書いてソウルまで会いに行き、人形の製作現場や人形と暮らすユーザーを取材して脚本を書き、9年がかりで映像化にこぎ着けたという。

 トークイベントで同監督は、日常では起こりえない内容を映画の世界として成立させるための工夫やキャスティング、クライマックスシーンに織り込んだ思いなどについて語った。映画に取り入れた吉野弘さんの詩にも触れ、「命というものが本来的に含んでいる欠如というものを非常に豊かにとらえた、すごく美しい詩。人形はその詩と出合い、空っぽだというネガティブな思いがポジティブなものに転じていく。欠如は欠如のままなのだが、とらえ方が変わると豊かになるというのがきれいだと思う」と話した。

 主演のペさんについては、「パーフェクトとしか言いようがない演技。自分がどのように映っているかを常に把握していて感覚のレベルが高く、最初から最後までまったくぶれることがなかった。人間的にもチャーミングで、現場の誰もが彼女を愛し、悲しいストーリーの中を彼女は豊かに生きていた」と絶賛。

 今後の活動に関しては、昨年金沢で開催された「こども映画教室」で一緒に映画を作った生徒がその後も自分で映画を作り、劇団に入るなどして活動を続けていることを引き合いに、「自分がものを作り続けていくのと同時に、子どもたちに映画作りの面白さを伝え、映画を見る力を培っていくこともやっていきたい」と話した。

 同作の上映は12月4日まで。上映スケジュールは同館ホームページで確認できる。

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