徳田秋聲記念館(金沢市東山1)は5月20日より、特別展「秋聲と吉屋信子」を開催する。
会場では信子の生涯と代表作を、自筆原稿、初版本、遺品、映画・舞台資料などから紹介する。徳田家に残る信子から秋聲へ宛てられた書簡や、信子も属していた秋聲門下生の集まり「二日会」関連の資料など、秋聲と信子の親交がうかがえる貴重な資料も展示される。
ミニコーナー「手にとって楽しむ“少女雑誌”の付録」では、カルタ、名作童話、手芸帖など、当時の少女雑誌「少女の友」「少女雑誌」の付録を展示。実際に手にとって触ることができる。
吉屋信子(1896~1973)は、わずか14歳で懸賞小説に1等当選。大正5年から「少女画報」に連載された「花物語」は当時の「少女たちのバイブル」と呼ばれ、日本に初めて「少女小説」というジャンルを確立。後に、徳田秋聲が選者をしていた大阪朝日新聞の懸賞小説「地の果てまで」をきっかけに本格小説の書き手としても頭角を表し、戦後もノンフィクション「ときの声」、歴史小説「徳川の夫人たち」など意欲作を次々と生み出した。「徳川の夫人たち」はドラマ化され、後の大奥ブームの火付け役にもなった。
近年、その少女小説の美しさや戦後の短篇小説の文学性が見直され、多くの作品が復刊されたり、作品のリメーク版がドラマ化されるなど再評価が高まっている。
特別展は前期・後期に別れ、前期展は6月21日まで。洋画家・藤田嗣治が描いた肖像画や「徳川の夫人たち」の舞台資料等を展示する。後期は6月22日~7月22日で、代表作の「屋根裏のニ処女」の直筆原稿、巴里外遊時代のアルバムなどを公開する。
「信子の生涯や代表作の展示に加え、珍しい大正・昭和初期の少女雑誌の付録も楽しめる企画。来館のついでに、当館の近隣の東の郭を回遊したり、当館2階からの浅野川と梅ノ橋の眺めを楽しんだり、金沢の街並みも一緒に楽しんでほしい」(学芸員の大木志門さん)という。
観覧料は一般300円ほか。開館時間は9時30分~17時(受付は16時30分まで)。