アーティスト・山本基さんの個展「彩りの記憶」が11月23日、ギャラリーケアリング(金沢市石引4)で始まり、オープニングイベントでアーティストトークが行われた。
ギャラリーケアリングで始まった山本基さんの個展「彩りの記憶」
山本さんは金沢美術工芸大学を卒業した後、金沢を拠点にインスタレーションや絵画などを制作。国内外で塩を使用したインスタレーションを行い、展示後に塩を来場者と共に回収して、現地で「海に還(かえ)す」活動を行っている。2021年の奥能登国際芸術祭で7トンの塩で制作した「記憶への回廊」は昨年の能登半島地震で倒壊したが、「記憶のかけら」プロジェクトとして作品の塩を使ったアクセサリー作りのワークショップを行っている。
会場は、がん患者やその家族のための相談所「元ちゃんハウス」に併設するギャラリー。山本さんは妻をがんで亡くした2年後に塩を使った作品展を開いたことがある。
会場には、床に置いた9枚のカラーパネルに塩で模様を描いた作品「彩りの記憶」のほか、キャンバスに絵の具で描いた壁掛けの作品やガラスに模様を彫刻した作品、能登半島地震の被災地からレスキューした能登瓦に模様を描いて土地の記憶を表現した作品などが並んだ。
トークイベントで山本さんは、「妹を亡くす体験を通じて自分の作品が大きく変わった」と明かした。お清めでも使われる塩を使った作品を思い立ったのもその頃だという。「塩は無色透明の結晶だが、乱反射して白く見える。自分の気持ちも受け止めてくれる気がした。湿度が高いと溶けてしまう性質も、思い通りにいかないことに気付かされた」と振り返る。
代表作「迷宮」シリーズや「渦巻」シリーズなど大掛かりな塩の作品について、山本さんは「大変な作業だが、大切な人との小さな思い出をつなげているので、1人で描くことに意味があると思っている。アクシデントがあってもそのまま受け入れ、うまくいかなくても描き直さない。思い出を忘れないために作品を作り続けている」と話す。
開場時間は11時~17時。12月14日まで。最終日の15時から、来場者と共に作品「彩りの記憶」を崩して塩を回収するイベントを行う。