
アニメなど現代版の日本文化ブーム「ジャポニスム」をテーマにしたトークイベントが7月12日、金沢未来のまち創造館(金沢市野町3)で行われた。
金沢市の委託事業TENJO KANAZAWAが主催する不定期のイベント「TENJO Small Talk」で、テーマは「『ジャポニズム』:想像力/創造力の源泉」。当日は約40人が参加した。
登壇したITジャーナリストの林信行さんは「近年になって抹茶、おにぎり、カツサンドなど、日本の日常的な物が海外で評価されたりブームになったりすることが増えた。1867年のパリ万博で日本文化が紹介されて起きたブームが『ジャポニズム1』だとすると、日本製品が世界進出した頃のブームが『ジャポニズム2』、そして今起こっているのは子供の頃からマンガやアニメに触れてきた世界中の若者が日本の日常や生活に根差したカルチャーを求めるブームで『ジャポニズム3』と呼べるのでは」と話す。
NHKコンテンツ戦略局専任部長の加藤拓さんは、NHKスペシャル「新JAPONISM(ジャポニズム)」という番組の中でボカロ(音声合成を使ったコンテンツ)、マンガ、食、デザインの4テーマを取り上げた。「かつての文化は欧州の貴族社会の中で、少数の優れたアーティストの活躍で生まれたが、江戸の浮世絵が象徴するように大衆が楽しむ文化が主流の日本では、無数の一般市民から生まれた」と話す。
アニメーション制作会社「トンコハウス」の監督で、米国で活動する堤大介さんは「日本のマンガやアニメは、損得ではなく好きだから制作するという人が多く、個性豊かで多様な作品が生まれている。米国のアニメはビジネス前提で事業として制作するので、創造性に限界を感じる。作品は評価されることを目指すのではなく、自分が楽しいと思えることを自信を持って創作することが重要」と話す。
登壇者全員によるディスカッションでは「日本は昔から海外から入ってきた多様なものをうまく調整・編集することで新しいものを生み出してきた。現代でもこの強みは生きている」「テック系スタートアップなどの提案は、世界中どこでも同じような感じがするが、日本発であれば日本の文脈やストーリーを採り入れると新しいものが生まれるのでは」などの意見が出された。