
トークイベント「工芸とアートでひらく金沢マチナカ」が3月30日、金沢21世紀美術館(金沢市広坂1)シアター21で行われた。主催は金沢中心商店街まちづくり協議会。
香林坊、片町、竪町、柿木畠、広坂の5商店街で構成する同協議会。地域にある同美術館が開館20周年を迎えたのを記念し、アートや工芸の力を生かして地元の魅力を引き出し、観光客と市民が共に楽しめるまちづくりを考えることを目的に企画した。
ゲストトークで登壇したデザイン会社TSUGI(福井県鯖江市)社長の新山直広さんは、自らを地域の資源を見つけて磨くデザイナーという意味で「インタウンデザイナー」と呼んでいる。活動の中心は3市町にまたがる越前鯖江エリアで、半径10キロ以内に眼鏡、漆器、和紙、刃物、繊維の5つの地場産業が集積しているという。新山さんは、工房の多い同エリアでオープンファクトリーや物販を行うイベントRENEWを2015(平成27)年に立ち上げ、2024年には5万人近くが参加するまでに成長させた事例を紹介。来場者のほぼ半分が県外からで、30歳までの若い層も半分あり、イベント開始から今までに自社製品を売る36の店舗ができたほか、後継者や移住者が増えるなど地域活性化にも貢献しているという。最初は反対する地元の意見も多かったという新山さん。「小さくてもいいからやって見せることが大切」と話す。
パネルディスカッションには新山さんを含む5人が登壇。同協議会副会長で「九谷焼諸江屋」店主の諸江洋さんによると、美術館ができるまでは現代アートがどういうものか地域の人はほとんど知らなかったが、今では徒歩圏内に多くのアートのギャラリーができたという。それでも「美術館には多くの観光客が訪れているものの、マチナカに来る人は増えていない。美術館が長期休館する2027年度には、街とアートをどうつなげていくかを考えなければ」と危機感を募らせる。
金沢大学融合研究域融合科学系准教授の丸谷耕太さんからは「金沢には上質なアートや工芸が集まっているが、全体像が見えないし、街を歩いても感じられない。イベントやツアーなどでマチナカのアートや工芸を見てまわるのが効果的では」との意見が出された。