
「復興と観光」をテーマにしたシンポジウムが3月3日、金沢商工会議所(金沢市尾山町)と東京をオンラインでつなぎ開催された。主催は金沢大学先端観光科学研究所。
同研究所が令和6年能登半島地震以降に行った「復興と観光」に関連する研究と教育、支援について紹介し、大学内外の関係者と情報共有を図ろうと開催。当日の金沢会場には約20人が集まった。
井出明教授は、長崎の高校から「今、能登に行ってもよいか」という相談を受けた事例を紹介。被災地は「忘れられることを恐れている」として訪問をサポート。能登の高校生と交流してもらったところ、SNSを通じたゆるい関係が生まれたという。井出教授は「弱いつながり」を多く持つことで人的ネットワークが安定するという理論をふるさと納税などの例を挙げて説明。「観光もこれに当たる」と話す。
同大学で講師を務めている豊島祐樹さんは、地震前の事例を報告。宇出津(能登町)にある古民家を所有者の協力で大学の研究拠点として利用し、地区にまつわる展示や祭などのイベントで活用することで、新たな地域のコミュニケーションが生まれたという。拠点は豊島さんが所有することになった1週間後に地震で被災したが、「地域の記憶を残すプラットフォーム」の整備を目指し、修理して地域研究や住民が活用できる場として再生するという。
丸谷耕太准教授は、災害が起こる前に準備すべきことを考えようと、支援活動を行っているさまざまな市民団体から課題を聞き取ったところ、活動資金に次いで多かったのが「他団体や行政などとの連携やつながり」だったと報告。平時からの連携を訴えた。
佐無田光教授は、観光デザイン学類に観光ボランティア科目を新設。企画した能登におけるボランティア活動に単位を付与することにした。活動の一つ「復興ガクタビ」造成事業では、学生が「今行ける能登」を調査して旅行プランを作り、旅行会社と協力してパッケージツアーを商品化したという。輪島漆器の洗浄作業、観光地の草刈り、地域の祭の支援、能登瓦のレスキューなども企画、実施した。
このほかビッグデータから分析した地震前後の人口推移や、旅行体験が被災者に与える医学的影響などの報告があり、第2部では登壇者によるパネルディスカッションが行われた。