金沢くらしの博物館(金沢市飛梅3、TEL 076-222-5740)で11月9日、市民を対象に「着物で庭園巡り」が開催された。30人の参加者が着物姿で、通常は一般非公開になっている松風閣(本多町3)や辻屋庭園(寺町1)を巡った。専門学芸員の解説付きで見て回ることができることから募集当日には定員に達した。
同館のイベントとして「着付け教室」を過去に開催した際、受講生から「着物で街を歩いてみたい」との要望があったことから実現し、今春に続き2回目の開催となる。参加者は「着物を持っているが、着て出かける機会がない。普段は入れないような歴史と風情のある庭園に着物姿で出かけられるのはうれしい」と話す。
当日は「金沢くらしの博物館」に集合し館内を見学。同館は1899年に中学校として建てられた洋風木造建築で、「金沢市民俗文化財展示館」として歴史を刻んだ後、昨年から「金沢くらしの博物館」に改称。市民から寄贈された生活資料・職人道具・電化製品などを展示、金沢の暮らしを中心に紹介している。
一行はその後、金沢市文化財保護審議委員・北村渉さんの案内で、江戸時代初期に加賀百万石の家老・本多家の庭として作られ2003年に国の登録有形文化財に指定された「松風閣」に移動。霞ケ池を中心に古沼と樹木を生かして作庭された池泉廻遊庭園の風情を満喫した。次に訪れた「辻家庭園」は大正初期に作庭され、「北陸の鉱山王」として知られた旧加賀八家の横山家の別荘地庭園で、1947年に辻家の所有となったもの。高さ5.5メートルの大滝は伝統的な滝石組の手法ではなく、富士の溶岩を鉄筋コンクリートで固めた崩れ石積の手法で造られている。材質や施工も優れており、近代以降の新技術を用いた秀作で貴重なものといわれている。
くらしの博物館が作成した資料には庭の歴史や構造が詳しく説明されており、参加者は資料片手に庭の隅々まで散策し、好みのアングルで写真を撮るなど秋の彩りを楽しむ様子が見られた。同館では「好評を得ているので、今後は春と秋に同じようなイベントとして続けたい」としている。