日本海を北上する江戸時代の買積船で、蝦夷地(北海道)との海洋交通の大動脈だった「北前船」のアマチュアファン約70人が全国から集まり、9月6日・7日、加賀市の「セミナーハウスあいりす」で「第22回全国北前船セミナー」を開催した。
今回のテーマは「海難と宗教」。板子一枚下は地獄といわれる海の世界は、船乗りの家族や遊女、海の男たちによる命を懸たドラマだったという背景をもとに、全国各地に散らばっている貴重な資料を使った討論会や交流会、街並み見学などが行われ、大学教授などによる学会とは一線を画した、愛好家ならではの視点でのセミナーが繰り広げられた。
今回は基調講演として、青森県立郷館学芸課長の昆政明さんが、青森のみちのく北方漁船博物館で復元された「みちのく丸」の過去8回の公開の詳細をレポート。中でも昨年10月にNHKで収録された「篤姫」のワンシーンの航海映像は特に会場の注目を集めた。
来年春には同復元船の全国公開も予定されており、瀬戸内海から馬関海峡を経て日本海から北上し、青森へ帰着するまでの3カ月間に各地で体験乗船などイベントを企画しており、全国各地から集まった熱心なファンに同イベントへの協力を呼びかけた。
石川県は、加賀の「橋立」や金沢の「宮腰」(現在の金石)、能登の「福浦」などが全国屈指の北前船の寄港地と知られ、中でも今回セミナーが開催された加賀市の橋立は、日本一の富豪村として栄華を極めたといわれる。
幹事を務める橋立町の薮下昇一さんは「年々参加者が増えているのはリピーターが多いから。年齢層も多岐にわたる。今年で22回目を迎えたが、可能な限り続けていきたい」と語り、日本一の富豪村としての誇りを胸にさらなる意欲を見せる。