石川県能美市のドレス専門店「美露土(びろーど)」は、制作する石川県産の織物生地を使った加賀友禅染めのミニチュアドレスを石川県立音楽堂(金沢市昭和町)のロビーに展示し、地場産業の繊維織物と伝統工芸を組み合わせた商品としてアピールしている。
ドレスは、今までの伝統的な柄とは全く異なる12星座をモチーフにした柄を、加賀友禅師が手描きで石川県産のシルクに染め上げ、その上に薄物の同じく石川県産のオーガンジーを重ねて同店がドレスに仕上げたもの。今までの友禅柄の着物をリメークしたタイプと違い、「幅広い層に受け入れられるフォーマルをテーマにしたもの」(同店)だという。
同店は今年1月、東京で開催された日本最大規模のファッション展示会のIFF(インターナショナル・ファッション・フェア)にこのドレスを出展したが、バイヤー中心の来場者には伝統工芸ということから特殊商品の印象をぬぐえず、その取り組みを充分にアピールできなかった。そこで、ユーザー層に直接アピールすることを目的に、今回の展示を音楽堂に申し込み実現に至った。
石川県は昔から繊維産業が盛んで伝統工芸も有名だが、業界としては現在落ち込みを見せている。業界の後継者不足を心配した同店のドレス制作者でありチーフデザイナーでもある湯谷知子さんが音頭をとり、シルクの「山木絹織」、薄物オーガンジーの「西村織物」、加賀友禅染師の「下村染工」と協力し、伝統にとらわれず市場にマッチした商品企画で新分野に挑戦している点が今回評価された。
湯谷さんは「県や業界の催しに参加するだけでは作品制作で止まってしまう。実際に『売れ続ける商品』を考案し、販売実践することが重要。職人はもっと危機感をもって世の中の流れを感じ取り、伝統だけにとどまらない新しい取り組みが必要。現在はまだ、組合などに守られた伝統の商いを続けられるかもしれないが、年々業界が縮小して行く中、やがては全国に名が知られている工芸ブランドや技術も消えてしまう恐れがある」とし、「そうならないためにも、多くの人に今回の取り組みのような新しい伝統工芸を使った商品、例えば薄物のキャミソールにモダンな友禅柄や、シルクに加賀刺しゅうのスーツなどの『一般市場でも受けるものづくり』を企画し続けていく必要がある」と話す。
音楽堂での展示は今月末まで。ただし、ロビーが通路にもなっているため大荷物の通過時には一時撤去されている場合もある。問い合わせは、湯谷さん(birode@rose.ocn.ne.jp)まで。
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