個人所有の金沢市指定文化財(名勝)「辻家庭園」(金沢市寺町1)が結婚式場兼カフェとして活用されることになった。婚礼プロデュース、婚礼衣装レンタル・販売の「ノバレーゼ」(東京都中央区、TEL 03-5524-1122)が来年夏、オープンする。
辻家庭園は、加賀藩家老の一族だった故・横山隆興氏が明治時代末から大正時代初期にかけ、20万円(現在の約40億円に相当)を投じて造成した迎賓館の庭園部分。「椿山荘(ちんざんそう)」(文京区)や「旧古河庭園」(北区)などを手掛けた庭師、7代目小川治兵衛氏が設計したとされる。
約5200平方メートルの敷地の中に富士山の溶岩をあしらった人工の滝や谷川、池、築山を配置し、深山幽谷を思わせる「英国風自然庭園」で、マツやケヤキなど約30種類の樹木が植えられている。カワセミやウグイス、シジュウカラ、アオサギなどが羽を休めに訪れており、その鳴き声を間近に楽しむこともできる。
現在は「辻商事」(金沢市神田1)会長の辻卓さんが所有しており、「20代後半~30代をターゲットに、土地の景観や歴史を踏襲するオリジナリティーの高いゲストハウスを展開している」というノバレーゼが、庭園と、園内にある国登録有形文化財の主屋、離れなどを借りて、結婚式場として活用することになった。
敷地内に新たにチャペルと披露宴会場、庭園を見下ろすガラス張りの空中回廊「スカイブリッジ」を増設し、列席者待合室として利用する主屋、親族控室として使う離れと結ぶ。チャペルは80人、披露宴会場は130人を収容できる。
このほか、平日は主屋でカフェを開店し、地元住民や観光客らに軽食を提供するという。
投資額は6億円。年間150組の婚礼を見込み、5.5億円の売り上げを目指す。
同社店舗開発ディビジョンの樫村健太郎さんは「結婚式場間の競争は厳しく、差別化の武器になるものが欲しかった。新築の建物は数十年でなくなるが、ここは文化財に指定されているのでなくなることはない。結婚式を挙げられた方のお子さまやお孫さまがいずれカフェを利用していただくことができ、すてきな思い出になるのではないか」と話す。
辻さんも「地元ばかりでなく、県外から来られる方に金沢の文化の良さを理解していただく絶好の場所になるのでは。金沢の新名所にしたい」と期待を込める。