江戸時代中期創業の石川県の老舗和菓子店「圓八(えんぱち)」(白山市)と、ジェラート製造販売の「マルガー」(能登町)がこのほど共同で「あんころ餅(もち)」のジェラートを開発し、売り出した。発売から2カ月がたち、贈答用に使われるなど好評を博しているという。
「あんころ餅」はこしあんで小さなもちをくるみ、竹の皮で包んだ圓八の看板商品。同社では、このこしあんを使って、和菓子の売り上げが減る夏季の目玉商品を作ろうと、昨年3月、マルガーにジェラートの開発を持ち掛けた。
圓八によると、一般的なこしあんは皮を取り除いた小豆を砂糖と共に煮て作るが、同社のものはせいろで3回蒸した後、砂糖蜜を混ぜ合わせるという独特な製法で作られており、さっぱりした甘さのため、桜餅など他の和菓子に用いてもおいしくならないという。ジェラート開発にあたっても、当初は能登産の生乳であんの風味が消されてしまい、「うちのあんこでほかのものを作るのは無理かなと思ったこともあった」(村山勝専務)。
しかし、マルガーが圓八の従業員や常連客の意見を取り入れながら試行錯誤を繰り返し、開発着手から半年後、ようやく「あんころがそのままジェラートになった」というコンセプトに沿った上質な和菓子のような味が仕上がった。
中に入れる「もち」は、マイナス20度でも固くならないよう、圓八が工夫を重ねて製造。「あんころジェラート」として今年6月1日、満を持して発売した。
常連客という内灘町在住の主婦(59)は「食べた瞬間、『あんころ』と思うのど越しと風味」と出来栄えを評価する。
マルガーの柴野大造社長は「何百回も試作して、ようやく支持してもらえるものができた。流行もので終わらせるのでなく、長く愛される地域の特産品に育てていきたい」と意気込む。村山専務は「あんころ餅を食べていただいたお客さまにぜひ味見していただき、意見を伺いたい」と反応に期待を込める。
価格は90ミリリットル入り1カップ280円。圓八本店と直営の「天狗(てんぐ)茶屋」(白山市)、マルガージェラート金沢・野々市店(野々市市)などで販売している。