金沢美術工芸大学出身者による「2011東京・銀座-金沢-NY大展覧会」が現在、3都市で開催され、作家や企業のデザイナーとして第一線で活躍するOBや現役学生、教員ら延べ約1300人が作品を発表している。9月13日には金沢21世紀美術館(金沢市広坂1、TEL 076-220-2800)で合同企画展「わart展 金沢」が始まった。
同大開学以来のOBの数は約6000人に上る。今回は同窓会が声を掛け、人間国宝の前史雄さん(沈金)や中川衛さん(彫金)、任天堂専務で人気ゲーム「マリオブラザーズ」のキャラクターデザインを手掛けた宮本茂さん、スタジオジブリのアニメ映画「借りぐらしのアリエッティ」監督の米林宏昌さん、アニメ映画「サマーウォーズ」監督の細田守さんなどの著名人から、子育てを終えた主婦までが参加した。
4回目のOB展となる今回は、初めて金沢市とニューヨークを発表の場に加え、149会場で個展やグループ展など163の展覧会を開く。内訳は、金沢=51展、東京=109展、NY=3展。総合テーマは「金沢美大在学時に育まれた美の遺伝子」と「金箔(きんぱく)の美」を意味する「金の美」。展示作品は日本画、洋画、彫刻、CG映像、コマーシャル映像、商品パッケージ、ボディーアートなど。
メーンイベントの「わart展」は卒業生と現役学生約600人が直径約20センチ、厚さ約3センチの木の輪と金箔シート1枚を共通素材にして、自由な発想で製作した作品を並べる合同企画展。作品は3都市に分けて展示され、金沢会場には225作品が集められた。
輪にはまって抜けられなくなったブタを表した「ぶたわ」や、輪の内部を空洞にくりぬき、注ぎ口と持ち手をつけてやかん状にした「注器 RING(リング)」、廃材のねじとギア、銅片をワイヤでつなげた船「sky ship(スカイ・シップ)」など、若々しい感性が光るアイデア豊かな作品がある一方、伝統工芸の技を来場者に伝える重厚な作品も。前さんは黒漆塗りの上に沈金で2匹のチョウを描いた「沈金蝶文飾輪」を発表し、中川さんは金属透かし線模様で表したクジラとワシ、つないだ手を高々と掲げる2人の人間を輪の中に重ねて、「地球上の万物の協調」を表現した。
「わart展」の出品作品は全て販売も行い、収益はNPO法人「子供地球基金」(東京都渋谷区)を通じて、東日本大震災で被災し絵を描くことができない小中学生の支援に役立てる。金沢会場は25日までで、東京会場は18日まで、NY会場は22日まで。
同館ではこのほか、21日から25日まで映像展とパッケージデザイン展、プロダクト・環境デザイン展が行われる。映像展では、宮本さんと米林さん、細田さんの作品も上映される。
東京・中央区の展示スペース「ASK?P」では今月17日まで、卒業生で美術科准教授の鈴木浩之さんが個展を開催している。鈴木さんの作品は人工衛星を利用して撮影した地上絵で、新作「Point in the park(ポイント・イン・ザ・パーク)」と「Microcosm(マイクロコズム)」、映像作品「地球観測日和(びより)」の3点を発表し、注目を集めている。
詳しいスケジュールなどは、同大同窓会関東支部「東京けやき会」のホームページで確認できる。