能登半島の最先端の地に「みんなの家」が完成しました。
狼煙町は、石川県珠洲市の北東部、海沿いに位置し、築142年という歴史のある禄剛埼灯台のふもとに50世帯100人が暮らす小さな町ですが、これまでも全国から多くの移住者を受け入れてきました。震災後も、避難所で自主的に将来のビジョンを話し合うなど、地域のコミュニティや文化を未来に継承するための活動に取り組んできました。
2025年7月、能登における「みんなの家」の第一号として「狼煙のみんなの家」が竣工し、オープニングイベントが開催されました。持続可能な地域づくりに取組む「NPO法人奥能登日置らい」が事業主となり、クライン ダイサム アーキテクツが設計を担当、多くの企業の支援のもと、地域の文化や未来をみんなで感じ、考えていくことができる新しい建築が誕生しました。今後、地域の人々が集う食堂やイベント、伝統行事の会場として活用され、町の垣根を超えた交流や復興の拠点となることを目指していきます。
竣工式当日、完成した「狼煙のみんなの家」の前で集合写真
「能登のみんなの家」とは
令和6年能登半島地震を受け、NPO法人HOME-FOR-ALL(代表:伊東豊雄、以下HFA)は奥能登地域で調査を行い、珠洲市、輪島市、能登町で計6棟の「みんなの家」を企画しています。現在、地元の運営団体と、HFAと連携する設計事務所が中心となり、建設や運営の準備が進められています。うち5棟は日本財団の「憩いの場」プロジェクトに採択されたほか、設備や家具などに関わる多くの企業の支援を受けています。
「みんなの家」とは
「みんなの家」は、被災地で人々の憩いの場をつくるプロジェクトです。2011年の東日本大震災をきっかけにスタートしました。伊東豊雄をはじめとする建築家と、被災した地域住民、行政や協力企業らが力をあわせ、これまでに東北で16棟、熊本では地震や水害の被災地で130棟以上が建設され、その多くがいまも活用されています。
●「狼煙のみんなの家」の特徴
1.能登らしさの継承(黒瓦の再利用、下見板張り、能登提灯)
2.みんなが集まる集会所(食堂と居酒屋のできる厨房、キッズスペース)
3.防災拠点(太陽光発電、浄水機、防災用具の保管)
敷地周辺
下見板張りの外観
エントランス
桜の木がある庭に面した縁側
土間空間に寄贈された家具がならぶ
畳の間とキッズスペース、上部には能登提灯
再利用された黒瓦
南面の一部はモノクロームの屋根一体型太陽光パネルを使用
厨房とカウンター
夜景
●竣工式の様子
2025年7月13日には、運営団体と地域住民、設計事務所や協力企業が集まり、竣工式が開催されました。石川県副知事や珠洲市長らがかけつけ祝辞をのべたほか、伝統芸能である「馬緤キリコ太鼓」のパフォーマンスが行われ、「第1回みんなの食堂」として料理が振る舞われました。
関係者や来賓が見守るなかでの神事
運営団体であるNPO「奥能登日置らい」代表の糸矢敏夫氏
伝統芸能である「馬緤キリコ太鼓」のパフォーマンス
地域住民による「第1回みんなの食堂」の準備風景
振る舞われた料理を楽しむ人々
縁側で人々が憩う
●瓦レスキューの様子
2025年3月には、能登で倒壊した家屋の瓦(能登瓦、小松瓦)の再利用に取り組む団体「瓦バンク」と連携し、町内の家屋から約7000枚の小松瓦をレスキューし、うち約3000枚を「狼煙のみんなの家」に再利用しています。
参加者の集合写真
回収された小松瓦
〈基本情報〉
「狼煙のみんなの家」
敷地:石川県珠洲市狼煙町テ13-1(「道の駅 狼煙」の隣地)
構造:木造平屋建て
延床面積:119.25平方メートル
〈クレジット・協賛リスト〉
企画:HOME-FOR-ALL
事業主体:奥能登日置らい
資金助成:日本財団
設計:クライン ダイサム アーキテクツ
施工:家元
協賛:石川県里山振興室、石川樹脂工業、インターオフィス、オカムラ、カリモク家具、川島織物セルコン、協和道路、グリーンコープ共同体、子ども未来支援財団、大光電機
協力:亀井提燈、瓦バンク、センコーグループホールディングス、NTTドコモビジネス、
堀瓦工業、モノクローム、良品計画、VAN (ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク)
写真:松田咲香(一部をのぞく)
●本件に関するお問い合わせ
特定非営利活動法人HOME-FOR-ALL(担当:吉川、西尾)
メールアドレス:info@home-for-all.org
住所:東京都中央区日本橋浜町3-10-1