WOTA株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 兼 CEO:前田瑶介、以下「WOTA」)は、全国7ブロックの都道府県(※1)および厚生労働省が整備する災害派遣医療チームDMAT事務局と、「災害時の生活用水資機材の広域互助に関する協定」を締結しました。
本協定は、WOTAが提唱する「水循環システムの自治体間広域互助プラットフォーム(以下「本プラットフォーム」)」構想の実現に向けた災害時連携協定です。本プラットフォームが今後成立することにより、災害による断水時に全国自治体間で水循環システム等を相互に支援し、被災地に生活用水を迅速に届けることが可能になります。
このたびの本協定締結を受け、WOTAは本プラットフォームの運営組織「JWAD(ジェイワッド/Japan Water Association for Disaster)」を本格的に始動します。国の防災基本計画(令和7年改訂)にも追記された官民の連携強化を実現し、国難級災害(※2)のみならず、いつ・どこで発生するかわからない大規模災害に迅速かつ柔軟に対応できる体制の構築を目指します。
※1 全国7ブロックの都道府県:全国知事会において定められた7つのブロック知事会(北海道東北地方知事会、関東地方知事会、中部圏地方知事会、近畿ブロック知事会、中国地方知事会、四国知事会、九州地方知事会)に対して、各ブロックごとに1つ以上の構成都道府県と協定を締結したことを指します。
※2 国難級災害:国難級災害について、土木学会は、「国の国力を著しく毀損し、国民生活の水準を長期に低迷させうる力を持った巨大災害」と定義しています(出典:「国難」をもたらす 巨大災害対策についての 技術検討報告書、2018 年6月、土木学会・平成29年度会長特別委員会・レジリエンス確保に関する技術検討委員会)。

公式サイト: JWAD(Japan Water Association for Disaster / 日本災害水ストレス対策協会
当日発表資料
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(左から)WOTA代表取締役 兼 CEO 前田 瑶介/内閣府 防災監 長橋 和久 様/国立健康危機管理研究機構 危機管理・運営局 DMAT事務局 次長 近藤 久禎 様/石川県 珠洲市 副市長 金田 直之様
1. 水道は最も復旧が遅れる「地中のライフライン」
大規模災害の発生時、被害を受けて停止した各種ライフラインの復旧にかかる時間には、しばしば大きな差が生じます。令和6年能登半島地震においては、電気やガス、通信の大部分がおおむね1カ月程度で復旧する一方、上下水道の復旧は数カ月~半年間もの期間を要しました。上下水道管路は地中に埋設されており、損傷箇所の特定や修繕、敷設に多くの人手と時間がかかるためです。
長期間の断水下においても、飲料水についてはペットボトル水や給水車により確保することが可能です。しかし入浴や手洗いといった衛生維持のための生活用水については、同様の方法で膨大な必要量を供給し続けることは困難です。生活用水の不足は感染症の蔓延や被災者の心身の健康被害に繋がり、特に医療・介護の現場や乳幼児・妊産婦の避難生活において深刻な衛生問題を引き起こします。こうした人道危機に対処するため、全国各地の自治体が生活用水のレジリエンス強化に取り組んでいます。
2. 水は「つくる」より「届ける」ことが難しい
災害時の生活用水確保のため、現在多くの自治体が可搬型浄水装置(非常時に河川水や防火用水等を処理して安全な水をつくる装置の総称)の配備を検討・推進しています。しかし、こうした造水ソリューションのみでの問題解決は現実的ではありません。実際の災害現場においては、つくった水をどのようにして需要地に届け、どのような設備で使用し、使った後の排水をどのように処分するかということが大きな課題となるからです。
入浴や手洗いなどを実際に可能にするためには、造水機能のみならず、水利用設備と排水処理が一体的に機能する必要があります。限られた水を繰り返し再生利用する可搬型の水循環システムであれば、需要地においてこの3要素を自己完結的に提供することができます。上下水道管の復旧を待たずに発災直後から使用可能な「水循環型シャワー」等の有用性・必要性は、能登半島地震以降の政府方針(※)にも明記されています。
※「経済財政運営と改革の基本方針2024」(2024年6月)、「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(2024年12月)、「新しい地方経済・生活環境創生交付金」(2024年12月)。
3. 入浴・手洗い支援における「総合調整機能」の不足
災害時の生活用水に関する課題は、用途によって異なります。トイレについては自治体備蓄品や民間レンタル品などの仮設トイレ資機材が充実してきており、自己処理型やトレーラー型など設備の多様化も進んでいるものの、設置や清掃、汚水汲み取りといった運用上の課題が残っています。炊事についてもキッチンカーの規制緩和が進んでいますが、衛生や防火に関しては現場での充分な管理が重要です。また洗濯に関しては、衣服の輸送支援(集荷クリーニングや救援衣料)が求められます。これらの用途の課題は、地域ごとのオペレーション体制の構築・強化によって解決できる見込みがあります。
しかし入浴と手洗いは必要な水量が多く、需要地での水供給と排水処理が不可欠である上、環境整備や衛生管理、順番管理といった運用ノウハウが数多く必要とされます。そのため、自治体ごとに仮設シャワー資機材を備蓄するだけでは、広範囲に及ぶ断水被害に対応することは困難です。発災時には必要な場所に必要な数の資機材を届け、設置から運用までのオペレーションを実行・継続することが求められます。本プラットフォームは、こうした総合的な調整機能を支える仕組みとして構想されたものです。
都道府県をハブにした「広域互助」の仕組み
本プラットフォームは国難級災害への対応を見据え、断水地域の避難所等における衛生維持および生活用水の確保を図るため、都道府県を介した自治体間での相互支援体制の構築を目的としています。発災時には必要な資機材や人材、情報を都道府県ごとに集約し、事前協定に基づいて都道府県間で連携し、被災地域の断水状況や水需要に応じて支援を展開します。
能登半島地震の発災時、WOTAは日本財団やパートナー企業の協力および水循環システムを保有する全国自治体からの貸与により、被災地全域に約300台のシステムを展開しました。結果的に長期断水下(2カ月以上)の避難所の約89%と68箇所の医療・福祉施設をカバーするに至ったものの、システム保有自治体への連絡から現地への設置までに、最長で1カ月の時間を要しています。しかしある県では市町村が保有する水循環システムを県が集約・輸送することにより、1週間で10台以上を能登半島に届けることができました。このような効率的な連携を全国規模で実現することが、本プラットフォームの狙いです。
広域互助プラットフォームの運営母体「JWAD」
本プラットフォームを実際に運営し、総合的な調整を行うのが「JWAD(ジェイワッド/Japan Water Association for Disaster)」です。JWADは自治体や医療機関、民間企業が協働する官民連携の中核組織として、平時の体制整備から発災時の生活用水資機材の集約・配備までを一体的に担います。
具体的には、JWADは主に以下の3つの機能を提供します。
- 平時の体制整備
相互支援体制の実効性を高めるべく、平時からの情報発信や訓練を通じ、システムの事前分散配備を進めるとともに、災害時の集約・最適配分の体制を整備します。
- 災害時集約
被災都道府県からの要請を一元的に受け、被災を免れた自治体が保有する「水循環システム」を都道府県単位で集約し、被災地への円滑な輸送を支援します。
- 最適配分
被災都道府県と連携し、断水地域の水需要を把握した上で、同一都道府県内の市町村間における「水循環システム」の最適配分を計画・支援します。
全国規模で「国難級災害」に備える
今後発生が想定される国難級災害(南海トラフ巨大地震、首都直下地震等)においては、能登半島地震の50~100倍(1,800~3,400万人)にも上る断水被害が予測されています。これほどの規模の被害に、被災自治体の努力のみで対処することは不可能であり、日本全体で支え合う広域互助の仕組みが必要不可欠です。内閣府・中央防災会議「防災基本計画」の令和7年改訂においても官民の連携強化に関する項目が追記されるなど、官民連携による災害支援の取り組みの重要性は近年さらに高まっています。
JWADは全国の都道府県と連携し、本プラットフォームの構築を3段階のフェーズで推進します。構築期(2025~26年)には全国的な連携の枠組みを整備し、実装期(2026~27年)には平時の訓練と、物流を含む災害時運用の体制を立ち上げます。そして制度化・標準化期(2028年以降)においては生活用水資機材の規格化や認証制度を開始し、人々の衛生と尊厳を守る日本発の生活用水レジリエンスモデルを確立します。

WOTAはこれまでに神奈川県、徳島県、愛媛県、北海道、富山県、兵庫県、新潟県、福井県、大阪府、奈良県、鳥取県、佐賀県と協定を締結し(基本合意を含む)、これにより全国知事会が定める7つのブロック知事会に対して、各ブロック1つ以上の構成都道府県との連携が可能になりました。また、厚生労働省が整備する災害派遣医療チームDMATの事務局とも本協定を締結し、被災地での円滑な支援を目的とした連携を推進しています。
各都道府県およびDMAT事務局と締結している協定の概要は以下の通りです。
〈各都道府県との協定締結 概要〉
- 協定名称:災害時の生活用水資機材の広域互助に関する協定
- 協定内容(一部抜粋):
- - 災害時において生活用水資機材(「WOTA BOX」、「WOSH」等)を被災していない自治体から被災自治体に対して提供
- - 本プラットフォーム事務局(WOTA)による支援要請の受付と各自治体間の調整
- - 災害時における関係者間での迅速な情報共有 (被災状況、生活用水資機材ニーズ、資機材の設置・運用・撤去スケジュール等)
- - 平時における事前配備の調整、推進

写真左:水循環型シャワー「WOTA BOX」/写真右:水循環型手洗いスタンド「WOSH」
〈DMAT事務局との協定締結 概要〉
- 協定名称:国立健康危機管理研究機構危機管理・運営局DMAT事務局とWOTA株式会社との連携協力に関する協定
- 協定内容(一部抜粋):
- - 災害またはそのおそれがある場合に、被災地での生活用水確保・衛生環境維持を目的として協力する
- - WOTAは、生活用水資機材(「WOTA BOX」「WOSH」等)を活用した広域互助プラットフォーム「JWAD」を組織・運営し、被災自治体(受援団体)からの要請受付、被災していない自治体(応援団体)との調整、資機材の割り振り、および平時の事前配備調整を行う
- - DMAT事務局は、情報共有や助言等を通じて相互支援体制の実効性を高める
- - 災害時には、被災状況、避難者数、断水状況、資機材輸送経路などを迅速かつ正確に共有
- - 平時においても、訓練・防災力向上に関する情報発信連携を実施
このたびの本協定締結により全国規模の協定網の基礎が形成されたことを受け、WOTAは前述の運営組織「JWAD」を本格始動しました。今後は本プラットフォームの全国展開に向け、本協定を全国の都道府県および協力団体と順次締結する予定です。これにより国難級災害のみならず、いつ・どこで発生するかわからない大規模災害に対して、迅速かつ柔軟に対応可能な体制を構築してまいります。
■石川県 副市長 金田 直之 様
能登半島地震では、断水の長期化により生活用水の確保が深刻な課題となりました。その中で、全国の自治体の皆様がトイレカーや水循環システムなどの機材を貸与し支援を届けてくださったことは、被災地にとって大きな力となりました。この経験を通じて実感したのは、「自分たちの地域を自分たちだけで守るには限界がある」という現実です。だからこそ、有事に向けて全国で支え合えるよう、広域互助の仕組みづくりが極めて重要だと考えています。今後もこうした取組が全国に広がり、災害時に互いを支え合える社会の実現を期待しています。
■石川県 県知事 馳浩 様
JWADの取組は、これまでの災害支援で得られた実体験を踏まえ考案されたものであり、災害時に自治体同士が水循環システムを互いに融通し合う仕組みは極めて重要だと考えています。今後は生活を支える必要なシステムとして水循環システム自体の技術的進歩に加え、本取組を広く国内に展開していく上で、石川県としてもハブとなる役割を果たしていきたいと思います。
■徳島県 県知事 後藤田正純 様
能登半島地震の際には、徳島県内の複数自治体は事前に水循環システムを購入、備えていたことで、被災地へ迅速に提供することができ、大きな力を発揮しました。
今後、南海トラフ地震に加え、全国的にも豪雨災害など多様な災害が発生する可能性が高まっています。こうした状況を踏まえ、WOTA様の水循環システムを防災装備品として位置付け、災害時に被災地へ適切かつ迅速に届ける全国配備体制の構築は極めて重要であると考え、徳島県も協定を締結致しました。我々自治体としても、国民、県民のQOL向上、災害対策に向けて、ぜひ一緒に取り組んでいきたいと思います。
■国立健康危機管理研究機構 危機管理・運営局 DMAT事務局 次長 近藤 久禎 様
災害時の医療現場において、水の確保は重要な課題の一つです。手洗い、医療器具の洗浄、患者を含めた現場の衛生管理など、生活用水が十分に確保されなければ、医療行為そのものが制約を受けます。一方、医療現場で必要となる生活用水の量は膨大であり、大規模災害時には給水車を中心とした従来の給水手段だけでは必要量を確保することは困難です。そのため、わずかな種水で大量の水利用を可能とする「水循環システム」が不可欠であると認識しています。
今回の協定では、被災地の医療・福祉施設や避難所等における生活用水を早期に確保するため、「JWAD」とDMAT事務局が連携し、平時からの情報共有をはじめ、災害時の迅速かつ即応的な連携体制を構築します。発災直後の混乱期においても、正確な情報と適切な技術が結びつくことで、現場で必要とされる支援をより迅速に届けられるものと期待しています。今後も医療現場と民間技術の連携を一層深め、人々の生命と尊厳を守る防災体制の強化に取り組んでまいります。
■内閣府 副大臣(防災担当) 津島 淳 様
被災地の衛生と尊厳を守るうえで、まず確保しなければならないのが水です。しかし、水の確保は災害時において最も基本的でありながら、同時に極めて難しい課題の一つでもあります。能登半島地震をはじめ、全国各地で大規模災害が発生し得る状況を踏まえれば、この課題を確実に解決する仕組みを平時から整えておくことが不可欠です。今回のJWADの取組は、自治体・医療機関・民間団体が連携し、それぞれの力を結集して互いを支え合い、水を確保する新たな広域互助の防災モデルを示すものです。水循環システムを全国で適切に配備し、必要なときに必要な場所へ迅速に届けていくためには、このような実効性ある官民連携の体制が欠かせません。
私からも、全国の自治体の皆様に対し、この取組に積極的に参画いただけるよう呼びかけてまいります。そして政府としても、我が国全体の防災力向上と強靭な社会の実現に向けて、こうした取組が全国で加速していくよう、力強く取り組んでまいります。
■内閣府 防災監 長橋 和久 様
能登半島地震では、広範な断水が長期化し、生活環境の確保が深刻な課題となりました。政府としても、この教訓を踏まえ、「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を改訂し、「生活用水の確保」を明確に位置付け、「地域未来交付金(地域防災緊急整備型)」などを通じ、避難所の水・衛生環境の底上げを進めてまいります。新設する防災庁は、防災政策の立案、徹底した事前防災の推進、発災直後から復旧・復興までの一貫統括を担う司令塔として、我が国の防災体制を中長期視点で再構築するものです。その柱の1つが産官学民連携であり、自治体、医療機関、民間企業、公益的団体など、多様な主体が連携できる仕組みづくりを進めてまいります。JWADの取組は、こうした方向性を具体化する一例として、実効性の高い広域互助モデルと捉えています。防災庁としても、このような取組が全国で着実に機能するよう、関係機関とともに取り組んでまいります。
【参考資料】
小規模分散型水循環システムの "広域互助プラットフォーム" | JWAD(Japan Water Association for Disaster / 日本災害水ストレス対策協会
『能登半島地震、及び国難級災害における「災害水ストレス」レポート(第一報)』プレスリリース
『能登半島地震、及び国難級災害における「災害水ストレス」レポート(第二報)』プレスリリース
【WOTA株式会社について】
WOTA は、水問題の構造的な解決を目指す民間企業です。
2014年の創業以来、地球上の水資源の偏在・枯渇・汚染によって生じる諸問題の解決のため、生活排水を再生し最大限有効活用する「小規模分散型水循環システム」およびそれを実現する「水処理自律制御技術」を開発しています。既に、2つの商品を上市し、災害時の断水状況下における応急的な水利用の実現や、公衆衛生の向上に寄与してきました。また、日常的な水利用を実現する「家庭用水循環システム」を開発し、国内外の一部地域で給水を開始しています。
詳細はこちら
https://wota.co.jp