東日本大震災の被災地、岩手県大槌町の大槌保育園の八木澤弓美子園長(46)が1月12日、募金箱に寄せられた義援金を使って1カ月に1回、同園に旬の果物を送っている金沢の近江町市場(金沢市青草町)を訪れ、感謝の思いを伝えた。
同園は震災の際、津波による浸水被害を受けた。3カ月にわたって休園した後、ようやくプレハブ建築を手に入れ、3キロ離れた山間部に仮園舎を建てて再開した。震災前は30人いた職員は16人に減り、保育士不足に悩んでいるが、60人の定員を上回る77人の園児を預かって働く父母を応援している。本来の園舎は修繕工事の真っ最中で、4月中旬には内装を一新した本拠に戻れるという。
園児のうち8割は、今も仮設住宅暮らし。「プレハブ建築は底冷えがひどく、飲みかけのペットボトルの中の水が凍る寒さだが、誰も文句を言わず、これが当たり前だと思って生活している」と、八木澤園長は話す。
同市場では、青年部が震災翌日の2011年3月12日に募金箱を設置し、これまでに300万円以上の義援金を集めた。このお金を使って被災地3カ所に1カ月に1回、食料品を送っており、同園には、県産高級ブドウ「ルビーロマン」やイチゴ、ナシ、ミカンなどを届けてきた。
八木澤園長は12日、長女の詩乃さん(23)と金沢市在住の友人を伴い、初めて同市場を訪問。青年部の坂野浩章部長(33)、宮村則光さん(38)、同市場商店街振興組合の倉田保秀事務長(61)と初めて顔を合わせた。
園長は「子どもたちは果物の箱を『宝箱』と呼んで、楽しみにしている。近くでは、一昨年12月にショッピングセンターが開店し、復興仮設商店街に地元の商店が入って、とりあえず何でも買えるようになったが、被災地では売っていないおいしいブドウや大きなイチゴを送っていただき、感謝している」と顔をほころばせた。
この後、今も市民や観光客らから善意の寄付が寄せられている募金箱を囲んで記念写真を撮り、「震災から1年10カ月もたっているのに、ありがたい。言葉だけでは伝えきれない思い」と、お金に託された激励の思いをかみしめた。
坂野さんは「前にお手紙を頂いたが、さらに、直接来ていただいてうれしく思っている。これからもまた、チャリティーイベントを開いて、交流していきたい」と笑顔を見せた。