金沢の食と文化の歴史を宿の主人が語り伝えるイベント「一宿一趣(いっしゅくいっしゅ)」が2月12日、尾張町で開催された。
老舗旅館「まつ本」のトークイベント前に催された「食の体験会」の海鮮鍋。
新幹線金沢開業を3年後に控え、新たなリピーター確保を模索する金沢市旅館ホテル協同組合が、所属する旅館・ホテルの個性や姿を観光客や地元の人に知ってもらおうと企画した。昨年11月の1回目に続き2回目となる今回は、北大路魯山人ゆかりの店としても知られる老舗の料理旅館「まつ本」(金沢市尾張町1)で開催した。
当日はトークイベントに先立ち、海鮮鍋御膳の体験会が行われ、参加者らは秘伝のだしつゆが入った1人用の鍋に各自の具材を投入しながら、北陸で初めて鍋料理を商品化したといわれる同店の味を楽しんだ。
その後、離れの土蔵を改修した「蔵座敷」に会場を移し、3代目主人の松本初夫さんが「文化を超え時を超えて伝える まつ本流もてなしの美学」と題して、金沢の料亭の歴史や文化、魯山人とのふれあいエピソードなどを交えながら、まつ本流のおもてなしの心を1時間半にわたって語った。
同組合の理事長も務める松本さんは「観光での『食』はリピーターを確保しやすい。不況を受けてB級グルメがはやる昨今だが、金沢はA級グルメとして勝負する都市。他の都市にみない風情や景観のロケーションに食文化を重ね合わせながら、出会いふれ合いを大切にする家族的なおもてなしでリピーターを開拓していきたい」と話した。同店では、いちげんでも気軽にお茶屋体験と名物鍋料理が楽しめる「金沢芸妓とお座敷遊び」を毎月実施し、県内外からの誘客を図っているという。
「一宿一趣」のイベントは、組合員の持ち回りにより今後も定期的に開催を予定する。