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旬の「加賀太きゅうり」多彩な料理で味わって 生でも、煮ても、焼いても良し

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 夏の加賀野菜の代表格として知られる「加賀太きゅうり」。その名の通り、通常のキュウリの5倍ほどの太さがあり、直径約7センチ、長さは約25センチ、重さは600グラムにもなる。どっしりとした丸みを帯びた形状に、肉厚で水分を多く含んだ柔らかい果肉が特徴。濃緑色の硬い表皮をむけば、生食や漬物はもちろん、炒め物や煮物、揚げ物など、幅広い料理に利用できる。

通常のキュウリの5倍ほどの太さがある「加賀太きゅうり」

 金沢市では1945(昭和20)年以前から栽培され、現在も金沢で栽培されている野菜を「加賀野菜」として認定し、ブランド化している。その中でも「金沢生まれ、金沢育ち」という加賀野菜は数少なく、加賀太きゅうりはその一つに数えられる。1936(昭和11)年、金沢市久安町の農家・米林利雄が東北の短太系キュウリの種子を譲り受け、栽培したのが始まりとされ、当時は皮が黄色く、ウリに近い三角の形状をしていたという。その後、長い年月をかけて「金沢節成りキュウリ」と自然交配させ、1952(昭和27)年ごろには、現在の濃緑色で俵型をした金沢特有の太きゅうりができあがった。やがて、生産地だった金沢市三馬の市街地化が進んで栽培が困難となり、1970(昭和45)年ごろから、砂地の打木町に移った。砂地でも育つように品種改良が進み、栽培方法も露地からハウス栽培に変わった。

 JA全農いしかわによると、現在の生産面積は2.99ヘクタールで、13人の生産者が栽培している。ここ5年で比較しても、ほぼ横ばいの状況となっている。2024年度の出荷量は、11月上旬までで9万ケースを見込んでおり、5月上旬から6月上旬にかけてピークを迎え、地元・石川県はもとより、関西、関東、中京圏にも出荷されている。

試食会で調理法を紹介するJA全農いしかわの中出希さん(左)

 JA全農いしかわ園芸課の中出希さんによると、出荷量は今後も現状維持を見込んでおり、伝統の加賀野菜を絶やさないためにも、部会としてさまざまな普及活動に取り組んでいるという。中出さんは「同じ加賀野菜でも五郎島金時や加賀れんこんなどと比べると、まだまだ身近ではない。価格も手頃な上に食べ方も多様で、日持ちもするなど魅力がたくさんある野菜だが、子どもたちやその親世代に、調理方法や味などがまだまだ知られていない。弁当のおかずにも最適で、カレーに入れてもおいしい。イベントや食育など、さまざまな取り組みを通じて、たくさんの人に手に取ってほしい」と話す。

 金沢市特産の農産物の消費拡大を支援している金沢市農産物ブランド協会は毎年、加賀野菜を金沢市立小学校に配布している。今年は5月20日から、加賀太きゅうり約1万2000本を51校に配った。担当者は「食育を通じて、加賀野菜を発信していきたい。マメ知識やレシピ、保存方法などのリーフレットも付けている。親子で知ってもらい、会話してもらえれば。小中学校の給食でも使われており、地産地消につなげていきたい」と話す。

「加賀太きゅうり」をPRするJA加賀太きゅうり部会の松本充明会長

 JA加賀太きゅうり部会では、毎月29日を語呂合わせで「太きゅうりの日」として、3年ほど前からPRを行っている。多様な食べ方を知ってもらおうと、5月29日に、加賀太きゅうりを使った料理の試食会を、金沢市の近江町市場で開いた。会場では生産者や関係者らが、マスコットキャラクターの「加賀太(かがふとし)」がプリントされた緑色のポロシャツを身に着けてレシピなどを紹介。マーボーや能登豚を使った塩こうじ炒め、キムチなど、多彩なキュウリ料理120食を来場者に振る舞った。「いい太きゅうり」にちなみ、11時29分からは、加賀太きゅうり290本を無料配布した。同部会長の松本充明さんは「実際に食べてもらって、おいしいという声を聞くとうれしい。今が旬の太きゅうりを多くの人に知ってもらいたい。まず、皮をむいてもらって、生でも、煮ても、焼いてもいい。いろいろな食べ方を知って、親しんでもらいたい」と話す。試食後には、来場者から「レパートリーが増えた。ありがとう」の声も多く聞かれたという。

加賀太きゅうりと能登豚の塩こうじ炒め

 松本さんは、市内の小学校で出前講座を行うなど普及活動に力を注ぐほか、生産者として、伝統野菜である加賀太きゅうりの維持、継承にも力を入れている。有志が集い「株式会社金沢アグリプライド」を立ち上げ、農家の高齢化で増えた打木町の遊休地を買い取って生産している。そうすることで、廃業などがあっても生産量を減らすことなく、安定した供給ができている。松本さんによると、生産者が専業農家として農業経営ができており、比較的若手が多いことも強みという。「世代交代がうまくできている。生産者13人のうち7割が自分より若い。下は30代で、40代も多い。皆、畑自体が近いので、同業者として、友人として、日頃から情報交換できている。縦横のつながりがあり、一致団結して頑張っている」。県外への出荷も順調に増えきており、「先日、友人が大阪のレストランで洋食料理に使われていたと教えてくれた。うれしい」と笑顔で話す。

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