国宝や重要文化財を最新のデジタルプリント技術と伝統工芸の技で再現した複製作品19点を並べる「文化財デジタルアーカイブ展」が現在、金沢21世紀美術館市民ギャラリー(金沢市広坂1、TEL 076-220-2800)で開催されている。
金沢国際文化交流研究所とNPO法人「京都文化協会」が主催する同展。作品は、2008年に開催された北海道洞爺湖(とうやこ)サミットでも展示され、話題となった俵屋宗達筆の「風神雷神図屏風(びょうぶ)」、没後400年を迎えた七尾出身の絵師長谷川等伯の「松林図屏風」、狩野永徳が手がけた「洛中洛外(らくちゅうらくがい)図屏風」、藤原隆信が源頼朝と平重盛を描いたと伝えられる「神護寺三像」などの国宝と、等伯の「山水図襖(ふすま)」をはじめとする重要文化財などを複製したもの。
これらは原作品を所蔵する寺院などから寄せられた「作品の劣化が進み、公開が難しいため、本物と見まがうような複製品が欲しい」との要望や、海外に流出した作品を日本でも見てもらいたいとの思いから作られた。それぞれ原作品を所蔵する社寺や海外流出前に作品を所有していた博物館、ゆかりの地方自治体などに寄贈され、これまでニューヨークやパリのルーブル美術館などでも公開された。
展示品のうち、「山水図襖」は、京都の高台寺塔頭(たっちゅう)・圓徳院から傷みが激しいため、原作品全32面を石川県七尾美術館(七尾市)と京都国立博物館(京都市東山区)に16面ずつ寄託したいと相談。文化財未来継承プロジェクト「綴(つづり)プロジェクト」として複製作品制作に取り組んでいるキヤノン(東京都大田区)と京都文化協会に金沢国際文化交流研究所、箔一(森戸2)が協力して制作した。32面すべてが完成するのは今秋の予定で、今回は「冬の面」4面だけを展示している。
19点のうち14点を手掛けたキヤノンによると、複製作業はまず、原作品をデジタル一眼レフカメラで細かく分割して撮影。得られたデジタルデータを画像処理し、和紙や絹に印刷。原作品と見比べながら、何度も補正をかけて、水墨画の微妙な諧調までも本物そっくりに再現する。現在のプリント技術で表現できない金箔(きんぱく)は、伝統工芸士が実際に金沢の金箔を使って加工。最後に、表具師が襖や屏風に仕立てる。完成まで1点あたり平均約8カ月がかかるという。
同研究所代表の浅野達也さんは「ルーブル美術館では、ごく間近で作品を見ることができるが、日本では作品に近づくことができない。デジタル技術を使った複製作品を見てもらうことによって、本物の保管と、一般の方に作品に親しんでもらうことが両立できるのでは」と同展の魅力を語る。
開館時間は10時~18時(金曜・土曜は20時まで、最終日の6日は17時まで)。入場料は、一般=800円、大学生・高校生=500円、中学生以下無料。6月6日まで。