干拓地農家が合同会社-地産地消と町のにぎわい創出目指し設立

モーガニック内灘の奥野さんは水にこだわり、自前の水質浄化装置を通した水を灌水に用いている。

モーガニック内灘の奥野さんは水にこだわり、自前の水質浄化装置を通した水を灌水に用いている。

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 石川県河北潟干拓地農家による合同会社「モーガニック内灘」(河北郡内灘町湖西、TEL 076-289-7535)が2月に設立され、農薬や化学肥料を使わない安全でおいしい野菜の地産地消を目指して活動を始めている。

モーガニック内灘が自信をもって勧めるトマト

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 きっかけは、河北潟干拓地の酪農家と野菜づくり農家の出会いだった。「これが野菜?とびっくりしました。生のカブがナシのようにみずみずしかったんです」――酪農を営む越田美起代さんは、奥野一男さんの野菜を初めて食べたときの感動をこう振り返る。

 20年前に脱サラで農業を始めた奥野さん夫妻は、同干拓地に移住して10年。土壌改良、水質浄化などの研究を重ね、おいしい野菜の栽培に情熱を傾けている。しかし奥野さんの野菜が、主に関西や金沢のレストランへ卸され、地元の人が食べる機会はこれまでほとんどなかったことを知った越田さんは、「この野菜を地域の子どもたちに食べさせたい」と一念発起。奥野さんと相談し、町に学校給食への導入を提案した。

 学校給食は供給量の問題から現時点では断念せざるを得なかったが、地産地消の仕組みづくりへの期待は膨らむばかり。奥野さん夫妻と越野さん夫妻、そして同じく酪農家の谷内潤二郎さん夫妻は、「一戸の農家だけでは無理でも、集まれば何かできるかもしれない」との思いで、合同会社の設立にこぎ着けた。社名の「モーガニック」は、広い同干拓地でも目立つ牛舎の牛の鳴き声「モー」と、有機栽培を指す「オーガニック」を掛け合わせたもの。

 メンバーがそれぞれ本業を持ちながらの運営になるため、思うように時間が取れないこともある。それでも「モーガニックだけが良くなるのではなく、地域全体を良くしていく」のが大前提だという。現在、障害のある人の自立支援のため、福祉作業所「うちなだの里」(内灘町大根布)と共同で野菜を加工・販売する体制づくりを進めている。農業をまちのにぎわいづくりにつなげたいと、官学との連携にも積極的だ。

 今年度は、河北潟近郊の世帯を対象にした会員制宅配システムを実施する。すでに約50件の申し込みがあり、「共感してもらえる人が大勢いてうれしい、励みになる」とメンバーは口々に語る。農の現場を中心にした交流の輪を広げていくため、会員対象の農業体験や牧場見学なども企画する予定。

 8月下旬には自前の加工施設を新設し、野菜を使ったオリジナルのスイーツや漬物などの開発を本格的に進める。代表の奥野さんは「河北潟産の牛乳を使ったチーズを開発し、チーズと野菜が一緒に楽しめる農家レストランを開きたい」と意欲を見せる。

 モーガニック内灘は、8月1日にうちなだの里で開催される「青空市」(9時~12時)に出店する。

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