能楽で使われる扇を集めた特別展「能扇-麗しの意匠-」が現在、金沢能楽美術館(金沢市広坂1)で開催されている。
能舞台に立つ全員が携える扇は、役柄や演目、流派などによって形や絵柄が異なる。舞台でシテ(面を着ける主役)とワキ方(面を着けない脇役)が使う扇は「中啓(ちゅうけい)」と呼ばれる大型の扇で、骨が15本あり、閉じると先端が末広がりになるのが特徴。会場には演目に合わせた装束や面と共に展示する。
舞台で「地謡」(舞台後方で合唱する演者)や「囃子方(はやしがた)」(笛や太鼓などの奏者)などが使う「鎮扇(しずめおおぎ)」は一般的な大きさと形で、骨が10本ある。会場には、能楽太鼓の人間国宝だった柿本豊次に贈られたさまざまな「披(ひら)き扇」と呼ぶ記念扇が並ぶほか、俵屋宗達が描いたと伝わる扇や、高浜虚子の書いた扇などを展示する。
江戸期から能扇を手がける十松屋福井扇舗(京都市)が、素材や技法を調べながら明治期の中啓を再現・制作した扇も、解説と共に展示する。今では作られていない「糊地(のりじ)」と呼ばれる厚手の和紙を使うという。3月7日には、同店店主の福井芳宏さんによる講演「扇のはなし -伝統産業のいま」がある。
同館学芸員の塚田華都緋さんは「演者が舞台美術を背負うとも言われる能楽は、能面と装束が主な道具。能扇は舞台では見えづらく、近くでじっくり見る機会もないことから企画した。当館で扇だけを取り上げて展示するのは初めて。扇の多彩さを感じてほしい」と話す。
開館時間は10時~18時。月曜休館。料金は310円、高校生以下無料。3月22日まで。