「匠のわざと日本の文化を未来へ紡ぐ 伝統的酒造りシンポジウム」が1月25日・26日、金沢港クルーズターミナル(金沢市無量寺町)で行われた。主催は文化庁。
日本の伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産登録されたことを記念して企画した同イベント。初日は「スペシャル鼎(てい)談」と題し、日本酒業界発展のために幅広い活動を行っている元プロサッカー選手の中田英寿さん、フレンチレストラン「レフェルヴェソンス」シェフの生江史伸さん、「THE THOUSAND KYOTO」ソムリエの岩田渉さんが登壇し、日本酒について意見を交わした。会場に用意した120席は埋まり、立ち見に何重もの人垣ができた。
「日本国内の酒蔵の半分に相当する500ほどの酒蔵を訪れた」という中田さんは「最近は個性のある日本酒が増えたと感じる。酒蔵からはどういう料理が合うかを問われ、料理店からはどの日本酒が合うかを問われることが多い」と話す。
生江さんは「フレンチが専門ということもあり日本酒は飲まなかったが、海外の客の要求にこたえて提供することが増え、勉強するうちにおいしさに気付いた」と話す。「海外の人に日本酒の新しい楽しみ方を学ぶことも多い。日本酒は和食だけでなくさまざまな料理と合わせることができる懐の深さがある。うまみ成分があることで料理とのペアリングが生まれるところが、料理の油種と合わせるワインとは異なる」とも。
岩田さんは「海外のソムリエは日本酒のペアリングの良さをよく知っている」と話す。「最近はペアリングを重視してワインのようなフルーツの香りがする日本酒や、軽やかで滑らかさを感じる低アルコールの日本酒も出てきた。日本酒には何百年もの歴史的背景があるので、それぞれのストーリーもちゃんと伝えなければ」とも。
中田さんは「日本酒は安いのにおいしいものが多い。ワインと比べてプレゼンテーションが弱いので、蔵元も英語で価値を海外に伝えていくべき。ユネスコ登録を機に新しい日本酒が生まれたら」と期待を寄せる。
シンポジウムでは能登の被災蔵の復旧・復興に向けたトークセッションのほか、石川県の地酒販売や飲み比べ体験会なども行われた。