災害への対応や防災に写真や3Dデータなどの情報を活用する「デジタルアーカイブ」の重要性を訴えるイベントが1月15日、石川県立図書館(金沢市小立野2)で行われた。
能登半島地震など激甚災害が断続的に発生している現状を踏まえ、災害の状況を記録して課題解決や防災などに役立てるためにデジタル技術で情報を共有する「デジタルアーカイブ」の重要性を訴えようと、東京大学とQUICK(東京都)が「災害デジタルアーカイブの最前線」と題して開いた同イベント。両者は石川県が1月29日に公開する「令和6年 能登半島地震アーカイブ」の制作などに協力していることから、当日開いたトークセッションに浅野大介副知事が登壇するなど石川県も後援した。
トークセッションでは、東京大学の渡邉英徳教授が可視化技術について説明。「2011(平成23)年の東日本大震災ではGoogleマップに写真を貼り付けていくプログラミング作業をエンジニアが行い、制作に1週間ほどかかった。2023年のトルコ地震では、ノーコードの技術と衛星画像を活用して18時間で作成できた。現在はフォトグラメトリーの技術が進み、ドローンの空撮とAIで3D空間を生成する3DGS技術によって30分ほどでリアルな映像を作成できるようになっている。技術が民主化され、誰でも簡単に3Dデータを作ることができる時代になり、災害を多面的かつ速やかにデジタルアーカイブ化できるようになった」と話す。
浅野副知事は「能登半島地震では情報収集に苦心した」と振り返り、即応性が求められる災害時の状況の把握に役立てようと県職員を対象に3Dマップの作成を学んでもらうワークショップを行っているという。「何かあればまずドローンを飛ばして情報収集したり、住民がスマホで撮影した写真や報道機関が集めたデータなどをアーカイブに活用したりできないかなどさまざまなアイデアはあるが、法律や著作権などへの対応で課題も多い。デジタルアーカイブをどう維持して活用していくのかは、国にも考えてもらう必要がある」と訴えた。
NHKの担当者や報道カメラマンも登壇し、東日本大震災の情報を「震災ビッグデータ」として可視化した事例や、報道写真と地図情報とを組み合わせウェブコンテンツとして実装した事例などを紹介した。
フォトグラメトリーやVR・ARなどの技術を利用した災害デジタルアーカイブの実演や展示のほか、デジタルマップとARアプリの作成を学ぶワークショップも行った。