トークイベント「食を彩る器、その魅力」が11月23日、石川県立図書館(金沢市小立野2)で行われた。
同館で開催中の企画展「暮らしのなかの工芸~器と布~」(2月24日まで)と、石川県立美術館(出羽町)の企画展「食を彩る工芸」(12月8日まで)との連動企画。当日は、料理人の川嶋亨さんと陶芸家の多田幸史さんが登壇した。
最初に登壇した川嶋さんは日本料理店「一本杉 川嶋」(七尾市一本杉町)の店主。同店は2020年に開店し、翌年にはミシュラン1つ星を獲得。2年先まで予約が埋まるという人気店だったが、1月1日の能登半島地震で被災し、現在も再建のめどは立っていないという。地震発生時は大阪府にいたが、「料理人として器は命の次に大切。修業時代から集めてきた器がまず心配だった」と振り返る。3日後に店に戻ったが、「有形文化財に指定されている建物の外壁は崩落し、店内は器や道具が散乱している状態だった」と話す。料理を提供する上で大切にしているという「五味五感」では、料理や素材、楽しく食事ができる空間作りに触れた。「器も料理や空間と密接に関係しており、器によって見た目も味わいも変わる。総合芸術としての料理において、器は大切な道具」と話す。
トークイベント後半では、石川県立美術館の企画展に新作の器の陶芸作品を出展した多田さんがゲストで登壇。「器は料理を盛り付けても、インテリアとして飾ってもいい。身近に器を置いて、日々がどう変わるのかを感じてほしい」と話した。
聞き手役の石川県立美術館副館長の山本陽一さんが「工芸作家の器に料理人が料理を盛り付けて参加者に提供するコラボ企画を実現させたい」と話すと、川嶋さんと多田さんは「ぜひやりましょう」と応じた。
企画展では、石川県の器や布に焦点を当て、輪島塗や珠洲焼、九谷焼、能登上布や加賀小紋などの工芸品を展示するほか、食や器、布やテキスタイルに関する書籍を紹介している。