学ぶ・知る

金沢で「金沢診断」振り返るフォーラム 金沢らしいまちづくりとは

フォーラム会場の様子

フォーラム会場の様子

  • 1

  •  

 フォーラム「金沢のまちづくりを見つめ直すー谷口吉郎の『金沢診断』を起点に」が8月24日、金沢市文化ホール(金沢市高岡町)で行われた。

フォーラム会場の様子

[広告]

 「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」(金沢市寺町5)が12月1日まで開催している企画展「谷口吉郎の『金沢診断』~伝統と創造のまちづくり~」の関連イベント。会場には約100人が集まった。

 司会を務めた同館館長の水野一郎さんによると、戦後復興で多くの都市が近代化していった1960年代、戦災が無かった金沢では藩政期から残る街並みと近代化の開発との間で住民の価値観が揺れ動いてさまざまな議論が起きた。そこで金沢市が建築界の重鎮で金沢出身の谷口吉郎に依頼したのが、客観的にまちづくりの現状を見つめ直す「金沢診断」という。

 この日登壇した国学院大学観光まちづくり学部長の西村幸生さんは、急速な都市開発が進むと同時に各地で景観や建物の保存運動が盛んになっていった歴史を紹介。1967(昭和42)年に金沢診断を依頼し、翌年の金沢市伝統環境保存条例の制定につなげた金沢は、その中でも先頭を走っていたという。

 金沢経済同友会代表幹事で老舗酒店経営者の福光松太郎さんは、暗渠(あんきょ)になっていた市街地の用水を開いて元の姿に戻したり、郵便配達の効率化で変更された旧町名を復活させたりと、行政と一緒にまちづくりを推進してきた事例を紹介。最近では都心軸にあるホテル跡地や日銀跡地の活用方法を議論しているという。

 埼玉大学人文社会学研究科教授の内田奈芳美さんは「金沢らしさ」を研究する中で、主観的に個人で感じる「金沢らしさ」が新しいものを創造する源泉になり、結果的にそれが伝統をかたちづくっているのではないかと分析。金沢診断は建築家などのクリエーターも「金沢らしさ」を考えるきっかけになったと話す。

 最後に行われたディスカッションでは「伝統と創造は、保存と開発の共存を意味する。江戸時代のものを丁寧に残していくと同時に、未来に残って次の伝統になるような新しいものをつくっていかなければ」「新しい建築やまちづくりの開発は何をやっても良いわけではなく、金沢らしさが必要。現代の『新・金沢診断』が必要では」という意見が出た。

ピックアップ

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース