通常非公開となっている金沢市の辻家で10月9日~13日、金沢市在住作家によるアート展示や座禅会、香席などを行う「ねはんぐんじょう 涅槃(ねはん)群青」が開催される。
辻家は犀川に臨む寺町台にあり、庭園は金沢市指定文化財、住宅母屋と表門及び塀は国の登録有形文化財に指定されている。藩政期に加賀藩の家老を務め、明治時代より鉱山事業で成功を収めた横山家が、全盛期の明治30年代後半に豊富な資金力と鉱山業で培った土木技術を駆使して造成した回遊式庭園は、日本で最も古い英国式和風庭園の一つとされる。庭園の中心である大滝には富士山の溶岩が大量に使用され、固定のために鉄筋コンクリート技術が取り入れられた。住宅母屋には、加賀群青と呼ばれる鮮やかな群青色の土壁が施され、表門や塀とともに大正中期の和風建築の特徴を色濃く残している。
同イベントでは、辻家の当主・辻昭さんの解説付きで庭園を見学することができるほか、母屋と離れに金沢市在住のアーティスト3人が作品を展示する。9日には、観音寺(富山市八尾町)の今里道真さんの指導による座禅会(3回)が行われ、11日には、志野流香道の千田典子さんによる月見香で十三夜の月を愛でる。
アート展示の出品作家は、新保裕さん、田聡美さん、エブリン・テプロフさん。新保さんは木の素材を使った彫刻作品、田さんはガラスの香合、テプロフさんは金沢の風景を切り取った写真をジクレー版画という技法で和紙にプリントした掛け軸スタイルのフォトインスタレーションを発表する。
同イベントは、彗星倶楽部(片町1、TEL 076-264-0088)の中森あかねさんが企画し、金沢21世紀美術館(広坂1)が金沢市内で行う「金沢アートプラットホーム2008」(10月4日~12月7日)のエクステンション展として開催される。
「私の中では、アートも香席も座禅も、体験者が言葉では言い表せないものとしてとらえられるもの。金沢ならではの企画で、アート作品は母屋や離れにさりげなく展示しようと考えている。参加者の皆さんには、楽園のような体験をしてもらいたい」(中森さん)
入場は完全予約制で、いずれの回も20人限定。入場料は内容により1,500円~2,500円。詳細は申込者のみに伝えられる。開始時間は10時、13時30分、16時(13日は10時、13時半の回のみ)。庭見学は各日とも10時開始の回のみ解説付き。11日のすべての回と12日16時開始の回は完売している。