金沢美術工芸大学美術科の鈴木浩之准教授(油画専攻)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、地球観測衛星「だいち」が写した金沢の4年間の移り変わりを星空のように表現したビデオ作品を制作し、動画共有サイト「Vimeo(ヴィメオ)」上に公開した。
公開された「Microcosm/ Kanazawa 2007-2010」の一部。(c)Hiroshi SUZUKI +Masato OHKI
人工衛星を美術表現のための機材として利用し、都市全体をカンバスに見立てるダイナミックな発想で、地上絵作品を制作・公開してきた鈴木准教授。今回はJAXA地球観測研究センター開発員の大木真人さんと共に、2007年から2010年11月末まで数カ月おきに金沢市内の東西約9キロメートル、南北約5キロメートルの範囲を写した衛星画像14枚を加工し、ビデオ作品に仕上げた。
作品名は「Microcosm/ Kanazawa 2007-2010」。「Microcosm(マイクロコズム)」は「小宇宙」の意味で、あたかも地上から宇宙を眺めて星座を探すように、「だいち」の視点から金沢の街を眺めて、日頃、見過ごしている街の変化を探してほしいとの思いで名付けたという。
2010年11月29日の写真と、これ以前に写された他の13枚の画像を比較して、変化があった地点をコンピューターで白く加工してあり、飲食店や小売店の進出が相次いだ田上町周辺は一等星のように輝いている。また、季節ごとに装いを変える山や街路わきの落葉樹、水田、道路を走行する大型トラック、バンなどは、二等星、三等星のように表現された。
一方、変化のない兼六園や、水面が衛星からの電磁波を別方向に反射させるため、画像に写らない犀川や浅野川は漆黒の宇宙のように見え、本物の星空を撮影したかのような作品となった。
当時を振り返る同大卒業生や、片町・石引の飲食店経営者、企業経営者ら生活者約10人の音声が添えられている。
鈴木准教授は「人工衛星を使えば、自分たちの街の変化を客観的に見ることができる。種子島でも衛星を使って地上に大きな絵を描くアート・プロジェクトを進めているので、こちらにも注目してほしい」と話している。
長さは6分37秒。「Vimeo」で無料視聴できる。