奇才の表現にふれる体験型企画が目白押し-金沢21世紀美術館「粟津潔展」で

粟津作品の版を使って実演する久保田さん(手前)と制作過程を解説する中山さん

粟津作品の版を使って実演する久保田さん(手前)と制作過程を解説する中山さん

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 「荒野のグラフィズム:粟津潔展」を開催中の金沢21世紀美術館(金沢市広坂1、TEL 076-220-2800)で12月15日・16日、粟津さんとともに木版画作品を生み出した職人が摺りの作業を実演し、現代の絵師とも言える粟津さんの表現世界を鮮やかによみがえらせた。

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 同展では、同館に寄贈された約2,600点の粟津作品の中から主要な作品1,750点を一挙公開。表現分野に境界を設けることなく多彩な活動を展開した奇才らしく、絵画や素描、ポスター、版画、パンフレット類、ブックデザイン、写真、映像、立体など多岐にわたる作品が会場を埋めている。

 実演はワークショップの場として開放されている展示室で行われた。粟津さんとの共同制作によって「現代の浮世絵版画」とも言える作品を生みだしたアダチ版画研究所(東京都新宿区)の摺師・久保田憲一さんが摺実演を行い、同研究所の中山周さんが解説を添えた。日本の伝統木版画は絵師が描いた絵に基づいて彫師が版を彫り、摺師が水性顔料を使って和紙に作品を摺り重ねるというプロセスをたどる。前半は浮世絵版画の摺実演が行われ、中山さんは版木の特質や色合いの調節、絵師・彫師・摺師の役割や技術、道具などについて、葛飾北斎の作品を例にとって解説した。後半は、粟津さんの作品「椿亀」から起こした木版を使って実演が行われた。参加者は現代の木版画の特徴などを語る中山さんの解説に耳を傾けながら、次第に色が重なって粟津さんの絵が和紙に浮かび上がっていく様子を目の当たりにした。

 同展は、粟津さんが使用したシルクスクリーンの版を用いた体験型ワークショップの開催や粟津さんが挿し絵を描いた物語や絵本を読む子ども向け企画など、鑑賞者が作品世界を体感できる関連企画を多く取り入れているのが特徴。16日はアートディレクター・北川フラムさんがレクチャーを行い、北川さんは粟津さんについて「身体と生理を根底に自分にとって興味のあることに向かい続け、対象に縦・横・斜めから博物誌的に入り込んでいく人だった」と語り、粟津さんとのエピソードを披露した。

 12月23日には、パフォーマー・浜田剛爾さんが粟津さんとともに手がけた1970年代後半のパフォーマンスをリメークする。展示室の中で一般参加者とともに図形楽譜に従ってパフォーマンスを行い、図形楽譜はシルクスクリーンにプリントして参加者に渡される。また、来年1月2日からは、作曲家の樅山智子さんが旅の経験を平面にデザインし、さらに音楽を生み出すという、次元をまたいで作品を生み出すワークショップを展開し、6日にパフォーマンスとして発表する。会期中、ほかに一柳慧さんによるコンサートや山下洋輔さんによるライブ、映画監督・篠田正浩さんや装丁家・祖父江慎さんによるレクチャーなどの多彩な関連企画も予定される。

 同展は来年3月20日まで。月曜・年末年始(月曜が休日の場合は翌日)休場。開場時間10時~18時(金曜・土曜=10時~20時)。

金沢21世紀美術館「荒野のグラフィズム:粟津潔展」金沢21世紀美術館で「粟津潔展」-東京ミッドタウンで会見(金沢経済新聞)

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