金沢交通圏のタクシーが運賃を巡って激しい攻防を繰り広げる中、北陸信越運輸局石川運輸支局は11月22日、個人タクシー149者から出されていた値下げ申請を認可した。同交通圏の個人タクシー333者のほぼ半数にあたり、これにより個人タクシーは上限運賃630円と下限運賃570円(いずれも中型、初乗り)に分裂することになった。
認可内容は、初乗り運賃(1.7キロメートル)が中型630円から570円、小型620円から560円、80円の加算運賃は中型252メートルから279メートルごと、小型309メートルから342メートルごととなる。
これまで金沢交通圏の個人タクシーは全者が上限運賃で走っていたが、法人タクシー30社が今年9月に値下げ申請に踏み切ったのを受けて、333者のうち256者が値下げ申請を行った。しかし、急激な原油高騰の影響から、11月に入って法人タクシーの値下げ申請撤回が相次ぎ、30社すべてが申請を取り下げるという異常事態に発展した。
個人タクシーも107者が申請撤回に追随する一方、「10万円近くする新メーターへの切り替えを済ませ、もう一度取り替える2重投資は痛すぎる。確かに下限運賃は苦しいが、客を増やして生き残りを図る」(ある個人タクシー)として、149者は申請を撤回しなかった。
規制緩和で金沢交通圏のタクシーはすでに飽和状態とされ、能登半島地震の影響による観光客の減少、北陸随一と言われるネオン街も、「長引く不況で客足は低空飛行状態」(関係者)が続く。今回、約半数の個人タクシーが下限運賃に移行し、下限運賃で走るタクシー台数が急増したことで、圏内のタクシー客争奪戦はますます過熱しそうだ。