エレクトロニックアートの祭典「eAT(イート)’11 KANAZAWA」が2月4日~6日、金沢市内を会場に開催され、全国から集まったデザインやITを学ぶ学生、クリエーターらが多様な分野の第一線で活躍するゲストから創作の姿勢を学んだ。
? 初日の「eAT’11 KANAZAWA」フォーラムでオタマトーンを使って演奏する明和電機の土佐さん、川井総合プロデューサーら。
イートはデジタルアート分野の人材育成と地場産業振興を目的に、金沢市が中心になって実行委員会を作り実施している。今年のテーマは「メイド・イン・ジャパン~金沢から発信するNIPPON(ニッポン)」。映画「リング」や現在公開中の「GANTZ(ガンツ)」などの楽曲を手掛けた作曲家川井憲次さんが総合プロデューサーを務め、漫画家、放送作家、CMディレクター、建築家、陶芸家らがゲストとして参加した。
5日に金沢市民芸術村で開かれたセミナーでは、ゲストがコンテンツと音楽、ものづくりをテーマに意見を交わした。このうち、コンテンツ分野では、漫画家のしりあがり寿さんがコーディネーターを務め、同じく漫画家の浦沢直樹さん、放送作家でミュージシャンの倉本美津留さんが漫画と笑いに懸ける思いを熱く語った。
浦沢さんは書きやすいペン先を手に入れたと近況を紹介し、「今年から僕の漫画が乗ってくるかもしれない」と話した。「ダウンタウンのごっつええ感じ」などヒット番組を担当してきた倉本さんは、最近テレビを見る若い人が減り、ゴールデン番組の視聴者は40歳代以上の女性ばかりになってきたと現状を説明。「(視聴者は)楽に見たいということになってきて、実験的なことをすると(視聴率の)数字が上がらない。新しいことができにくくなっている危機的状況」と険しい表情を浮かべた。
5日夜から6日朝にかけては同市湯涌温泉の旅館「かなや」で「夜塾(よじゅく)」が行われ、参加者約170人が浴衣や作務衣(さむえ)に着替えたゲストを囲んで車座を作り、ドリンク片手に制作の裏話などに耳を傾けた。東北新社専務でCMディレクターの中島信也さんは「意外にクリエーターは営業が大事。みんな口にしていないが、ものすごく努力している」と後進に話しかけた。
ボランティアとして夜塾に加わった金沢市のウェブデザイナーの男性(24)は「トップに立っている方々の意見を聞いていると、ものを作りたくなる」と創作意欲を刺激された様子。同市の会社員女性(40)も「今後の人生の参考にしたい」と聞き入った。
これに先立ち、4日に金沢市文化ホールで行われた表彰式では、建築家でデザイナーでもある鄭秀和さんが名人賞を受賞した。一般と小中高生から募集した作品の優秀者にも表彰状が贈られた。席上、明和電機の土佐信道さんとそのほかのゲストが電子楽器おもちゃ「オタマトーン」を使って、「かえるのうた」を演奏する場面もあった。