金沢駅構内で1953(昭和28)年に開業し、街の玄関口としての駅の変遷と共に歩み続けるおでん店「黒百合」(金沢市木ノ新保町、TEL 076-260-3722)に近年、女性の「おひとりさま」客の姿が見られるようになった。
創業当時は「国鉄金沢駅地下ステーションデパート」内で10席のみのカウンターを設け、電車の時間待ちをする人や男性の一杯飲み客が主流だった同店も、1991年の駅舎改装によりショッピング館「金沢百番街」へ、1997年には同館に増設された飲食店街「あじわい館」へと移転を続け、地元客のほかに観光客やサラリーマンの出張客なども増えた。現在の店舗面積は約112平方メートル。席数は50席。客単価は、昼は1,000円以下、夜は2,000~2,500円ほど。
駅構内という立地からサービスは迅速で、注文から間を置かずに料理が提供される。「当時は男性客の立寄りがメーンだったが今では女性の一人客も増え、滞在時間も20~30分から1時間ほどになった。ゆっくり食事をする人が増えた」と社長の和田辰巳さん。
おでんのだしうはコンブ・煮干し・カツオ・サバなど季節によって配合を変えながらも、創業以来、つぎ足しながら味を守り続ける。価格帯は100円~400円で、定番の卵やダイコンのほか、自家製のイワシのつみれやロールキャベツも人気が高いという。
霊峰白山に咲く花「黒百合」を店名とする同店では、白山市出身の初代店主・外志夫さんの時代から提供する山麓の名物料理も特徴。白峰地区から取り寄せた「固とうふ」の刺身(380円)や天ぷら(450円)、岩魚の洗い(950円)や空揚げ(820円)などを、小堀酒造店の「萬歳楽」とともに提供する。
2代目の辰巳さんが守り続けた味を現在は3代目の純さんが継ぎ、2014年の北陸新幹線開業に向け、伝統を守りながらも新たな時代へとかじを取る。
営業時間は10時~22時。