石川県を拠点としたNPOバンク設立を目指す「ピースバンクいしかわ設立準備会」は3月21日、日本初のNPOバンク「未来バンク事業組合」(東京都)理事長の田中優さんを迎え、野々市町交遊舎(野々市町)で講演会とワークショップを開催した。
NPOバンクは市民による非営利の銀行で、既存の金融機関による融資が受けにくい環境や福祉、教育、まちづくりなどの事業を行う事業体やNPOに対して低利の融資を行う。市民の意志を生かせる新しい金融の手段として注目を集めており、東京をはじめ神奈川、北海道、岩手、新潟、長野、名古屋など全国各地で設立が相次いでいる。
田中さんは、1994年に未来バンクを設立。個人が太陽光パネルなどを設置する際の資金繰りを支援する「つなぎ融資」への貸し出しを中心に、フェアトレード支援など社会活動支援の分野にも事業を広げている。アーティスト・坂本龍一さん、音楽プロデューサー・小林武史さん、ミスターチルドレン・櫻井和寿さんらが設立し、環境関連の事業に融資を行うNPOバンク「ap bank(エーピーバンク)」の顧問も務めている。
午前の部は田中さんが「おカネが変われば世界が変わる」と題して講演を行い、「お金を地域で回していくこと、お金で未来をつくっていくことを考えてほしい」と訴えた。続く午後の部では、ピースバンクいしかわ設立準備会メンバーと参加者が少数グループに分かれてNPOバンクの意義についてディスカッションを行った。参加者の中には融資を希望する市民もおり、福祉施設建設や農家レストランオープンなどの事業案が発表された。
同会が「NPOバンクを設立させ、地域コミュニティーを元気にするためには、市民の協力が欠かせない」と支援を呼びかけたことに応え、イベント終了後に早速出資を申し出る参加者も。同会メンバーは「多くの方に共感してもらえてうれしい。今後もホームページを通してピースバンクいしかわの活動に注目してほしい」と話す。
石川県では有志が昨秋から勉強会などの活動を開始。今後1年間テスト事業として融資を行った後、来年4月にNPOバンクの設立を目指す。同準備会への問い合わせはホームページから。