「日本一小さい専業農家」で春の種まき始まる-能美でUターン就農10年目

雑草と作物が共存する「風来」の畑

雑草と作物が共存する「風来」の畑

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 能美市の住宅地にある「日本一小さい専業農家」の畑で、春の種まきと苗の定植(ていしょく)が始まっている。

「風来」の直売店内

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 「風来の源さん」こと西田栄喜さんは、1年に50種類以上の野菜やハーブを完全無農薬で栽培しており、直売店「風来」(能美市、TEL 0761-55-4091)の裏にある畑は30アール(3,000平方メートル)。ひと目で見渡せるほどの土地に、年間の作付け計画に沿って整備された畝(うね)が並ぶ。自治体が収益性や生産計画を認めて営農支援の対象とする「認定農業者」としては最小の面積だ。

 品種と育て方にこだわり収穫した野菜は、一般的なものでも既存流通には流さず、店舗でセット販売するほか、ネットで全国に販売。自家製野菜で作ったキムチなど無添加の加工食品も人気だという。

 兼業農家に生まれ、バーテンダー、ビジネスホテルの支配人などの仕事を経て10年前に帰郷した西田さんは「幸せになるために農家になった」と言い切る。「家族5人が気持ちよく暮らすためには、いくら稼げれば幸せなのかシミュレーションしている。それ以上の収入があれば働き過ぎなので、翌年は控えめにします」とも。アグリビジネスが注目される昨今だが、西田さんは農業を自給自足の延長としてとらえ、家族とともに小さな農的生活を楽しんでいるという。

 現代の農業は設備投資が大きいことから、新規就農者には資金繰りが大きな壁となっている。日本一小さい専業農家である西田さんは、また日本一無駄のない農家でもあり、リユースやリサイクルを徹底。約120万円の資金で独立就農した。当時は無農薬・有機栽培のノウハウについては本だけが頼りだったといい、作物が虫害で全滅するなどの失敗も多かったが、小さな成功を積み重ねて作付けの種類を増やしていった。

 Uターンで農業を始めて10年。今、西田さんは地元石川県の良さを実感している。「石川は四季を通してさまざまな農作物が収穫でき、発酵食文化もある。何より県民が地域ブランドの米や野菜を大切にしている。日本で多くの情報発信地は東京だが、東京が唯一発信できない情報が農業。農業を通して地方の生活の素晴らしさを伝えたい」(西田さん)と意気込む。

 ネット販売も好調だが、一方で地域とのつながりも大切にしている。地域住民に呼びかけて草むしりイベントを開いたり、大豆から育ててみそを作るサークルを立ち上げたりするなど、農家と消費者の距離を縮めるために、積極的に活動の幅を広げている。

 これまで「土の産業」だった農業を、「知恵の産業」にすることを目指すという西田さん。「家庭菜園を始めたいが、何から手をつけていいのか分からないという人は多い。そんな時に農家がインストラクターになれれば」とも。

 直営店「風来」の営業時間は10時~13時。日曜・祝日定休。野菜、漬物のほか、自然食品や野菜の種、ハーブの苗などを販売している。

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