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金沢・国立工芸館で人間国宝と気象予報士がトーク 「工芸と天気」テーマに

(左から)漆芸作家・山岸一男さんと気象予報士・池津勝教さん

(左から)漆芸作家・山岸一男さんと気象予報士・池津勝教さん

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 漆芸作家・山岸一男さんと気象予報士・池津勝教さんのトークイベント「輪島の天気・自然と作品制作」が12月20日、国立工芸館(金沢市出羽町)で行われた。

トークイベント「輪島の天気・自然と作品制作」

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 同館で始まった企画展「工芸と天気展-石川県ゆかりの作家を中心に-」の関連イベント。当日、会場には約50人が集まった。

 山岸さんは人間国宝(重要無形文化財「沈金」保持者)で、輪島塗資料館の館長を務める。昨年の能登半島地震では負傷し、輪島の自宅兼工房は全壊。現在は金沢市内に住み、制作を続けている。「漆の乾燥には湿度が必要。最近ようやく漆を乾燥させる漆室(うるしむろ)を部屋に持ち込んで仕事ができるようになったが、目の前が海だった輪島の工房とは気温や湿度などの環境が違い、金沢では漆が乾きにくい」と話す。

 同展で展示する自身の作品「沈黒象嵌合子(ちんこくぞうがんごうす) 能登残照」について、山岸さんは「夕日に染まる能登の水平線を赤く、沖合で漁をするまき網船のかがり火の列を金で表現した。塗り重ねた漆を彫って色をのせて研ぎ出す作業を繰り返すが、定規などを使わず全てフリーハンドで作っている。側面の模様は間垣と呼ばれる能登特有の竹垣の隙間から漏れ出る家の明かりをイメージした」と解説する。

 池津さんは2013(平成25)年から、NHK金沢放送局の気象キャスターとしてニュース番組に出演している。石川県の気候について、「金沢は降水日数が全国2位。夏は全国平均に近いが、冬の雪や時雨が多い。平均湿度は金沢が70%なのに対して、漆芸の盛んな輪島は75%ある。雷も多く、金沢は全国1位で45.1日。冬に多いのも特徴で、世界的にも珍しい」と解説する。

 山岸さんは「金沢でも日課の散歩を続けているが、気候や自然の違いを感じている。能登の風景も地震で海岸が隆起するなど、一瞬で大きく変わってしまった。日々接しているものをモチーフに制作してきたが、その時々の風景や体験を作品に残すことで自分史をつくっていくつもり」と話す。

 企画展「工芸と天気展-石川県ゆかりの作家を中心に-」は3月1日まで。

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